[原子力産業新聞] 2007年2月22日 第2368号 <4面>

核融合研 ヘリカル装置で安全協定 重水素実験 地元協議へ

核融合科学研究所が大型ヘリカル装置(LHD=写真下)の重水素実験(D―D実験)に向けて動き始めた。安全管理計画について第三者の意見を聞く「重水素実験安全評価委員会」が先月、第1回会合を開催、今年4月末には中間報告を取りまとめる予定。核融合研はこの報告を受けて、地元自治体と環境保全協定締結への協議を開始したいとしている。

重水素実験安全評価委員会(委員長=片山幸士・人間環境大学学科長)の委員は公募の1名を含む地元関係者4名、放射線、プラズマ、リスクコミュニケーション、トリチウム、地震などの専門家12名、ジャーナリスト関係者1名の合計17名の委員で構成する。

第1回会合では、核融合研が重水素実験計画案や同実験の安全管理計画案などを説明。閉じ込め改善による高性能化への期待や日本原子力研究開発機構のJT―60(91年から同実験を実施)をはじめ、世界の核融合炉が同実験を実施していることなどを説明した。安全管理計画案ではトリチウムや中性子対策、実験情報の公開などについて考え方を示した。

核融合研では実験開始から10年間で、合計約2万回の同実験により、核融合炉設計のための予測性能に優れた物理モデルを構築したいとする。

同実験を巡っては、01年に地元住民ら約8,000人が同実験で発生するトリチウムが漏出する可能性があるとして、岐阜県公害審査会に対し、実験の中止を求める調停を申請。同審査会は03年に情報公開の徹底や技術評価会の設置などを骨子とする調停案を示したが、申請側がこの受諾を拒否し、同審査会は調停を打ち切っている。

核融合研ではその後も地元への理解活動に力を入れているが、同委員会立上げにより同実験に向けた動きが本格化する。


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