[原子力産業新聞] 2007年3月8日 第2370号 <3面>

スイス 原子力発電所のリプレースを盛り込む 許認可手続きの見直しも示唆

スイス政府は2月21日、既存の原子力発電所のリプレースを盛り込んだ新しいエネルギー政策方針を発表。原子力発電利用を、今後とも継続することを明らかにした。

政府の新方針を受け、連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は2007年末までに、具体的な行動計画を策定する予定だ。

新しいエネルギー政策方針は、@エネルギー効率の向上A再生可能エネルギーの利用拡大B大規模ベースロード電源の利用継続――の3本柱で構成されている。そして将来のエネルギー供給不足を補うために、短期的にはコンバインドサイクル・ガス火力(CCGT)を利用するが、長期的には既存原子力発電所のリプレースが欠かせないとの認識を示した。

2003年に成立した改正原子力法(2005年施行)では、「原子力発電オプションを堅持する」との表現に留まったが、今回は原子力発電の必要性を強調した一歩踏み込んだ内容になっている。

M.ロイエンベルガー環境・運輸・エネルギー・通信大臣は、「原子力産業界に新規建設のインセンティブを与えるために、新規建設に関わる一連の許認可手続きを見直す必要がある」と述べ、建設促進のための許認可手続きの合理化も示唆している。

スイスでは現在5基の原子力発電所が運転中。総発電電力量に占める原子力シェアは40%で、水力が55%の最大シェアを占めている。各原子力発電所の運転期間を50〜60年と仮定すると、2020〜2045年に順次運転を停止する計算になる。

2005年5月にスイス最大手の電力会社であるAXPOグループが、新規原子力発電所の建設を検討していることを明らかにしたが、具体的な建設計画は白紙状態である。

なおロイエンベルガー大臣は、CCGTの利用拡大にともなって増大することになるCO排出量について、「地球温暖化防止の観点から埋め合わせが必要」と指摘。出来るだけ早い時期に欧州連合(EU)と協議の場を持ち、2005年1月より開始されているEU域内排出量取引制度(EU−ETS)へのスイスの参加を目指したいとしている。


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