[原子力産業新聞] 2007年3月22日 第2372号 <2面>

原子力委 対インド議論深める 「エネ安全保障上も重要」

原子力委員会の国際問題懇談会は14日、第3回会合を開催、インドをめぐる国際動向について、関係機関や有識者から意見を聴取し、インドに対する原子力政策の議論を深めた。

今回、意見を述べたのは芹澤清・外務省軍備管理軍縮課長、長野浩司・電中研社会経済研究所上席研究員、吉田文彦・朝日新聞論説委員、金子熊夫・エネルギー戦略研究会会長の4氏。

芹澤氏は、民生用の原子力協力に関する米印合意の経緯、インドとロシア・中国・南アなど諸外国との原子力に係る外交動向について解説。今後、米印間の原子力協力協定に向けた協議、インド・IAEA間の保障措置協定締結のための協議、原子力供給国グループ(NSG)におけるインドの扱いに関する議論、などを注視しているとした。

長野氏は、OECD/IEAの世界エネルギーアウトルック06年版などによりインドのエネルギー需要動向、二酸化炭素排出量への影響などを説明。また、@踊り続ける巨像A着実に歩む巨像B重みに耐えかねる巨像――の3シナリオを提示し、@の場合には資源価格の乱高下の激化、Aの場合にも資源需給逼迫、Bの場合には化石燃料価格の低迷を招き、新型原子炉の導入などに対しマイナス要因として作用するのでは、と提起した。

吉田氏は、米印合意で評価できる点として、インドを将来的に新たな核軍縮・不拡散の枠組みに入れる効果、地政学・地経学的利益、温暖化防止への期待などを、疑問点としてはNPTの説得力・信頼力への影響、査察の範囲など合意内容の弱点などを挙げた。また、日本の対インド政策について核軍縮・不拡散に関しリスクとチャンス両面を十分に評価すべきとするとともに、平和利用の徹底という日本の原点をいかに担保するかが重要で、被爆体験国かつ将来の原子力輸出大国としてその責務は大きいと指摘した。

金子氏は、インドの原子力発電の拡大は化石燃料の消費を削減し、世界のエネルギー安全保障と地球温暖化防止にも貢献するという立場から、日本は米印原子力協力に支持を表明し、日印原子力協力も推進すべきとした。併せて、NPTを越えた新しい核不拡散体制を想定する上で、インドを取込むことの重要性を強調した。


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