[原子力産業新聞] 2007年3月22日 第2372号 <4面>

安全研究フォーラム 「軽水炉高経年化」で多くの課題が 電中研が高精度の照射脆化予測法を紹介

原子力安全委員会、原子力安全・保安院他共催の「安全研究フォーラム2007」が9日、東洋大学(東京都文京区)で開催され、軽水炉の高経年化対策をテーマに、国内外の研究成果を紹介し、今後の取組について討論した(=写真)。約500人が参加した。

海外からは、S.アミホ・米NRC原子炉安全諮問委員、A.グルッピナー・IAEA原子力安全局部長代理、ヴィタンザ・OECD/NEA原子力安全部副部長が各機関での研究動向を報告、応力腐食割れ、ケーブル劣化で各国の知見を集約するOECDの「SCAP」プロジェクトの成果などが披露された。

国内では、軽水炉の長期運転を見据え、実材料を用いた実験とナノスケールでの組織観察、計算機シミュレーションを組み合わせた研究により、高精度の圧力容器鋼照射脆化予測手法を開発・検証した電力中央研究所の成果に来場者から関心が集まった。

国内外の発表に続きパネル討論で、電気事業者の取組を報告した辻倉米蔵・電気事業連合会原子力開発対策委員は、高経年化プラントについて、「潜在化している現象が顕在化していくことに一番のリスクが」とした上、これらに対して「先手を打つ」ことに電力各社の関心が集まっていると述べた。安全研究の技術戦略マップ作りについて報告した関村直人・東京大学工学系研究科教授は、軽水炉導入初期の頃を、「完成された技術で新たな研究はもう必要ないという声もあった」と振り返る一方、現在では「大学に高経年化学科があってもよいほど」課題が山積みと指摘し、長期的ビジョンでの人材育成の必要を強調した。

座長を務めた松浦祥次郎・前原子力安全委員長は、取り上げられた多くの課題に対し、「総括し切れないほど」と述べた上、これらを今後の安全研究に役立てることを期待し、今回のフォーラムを締めくくった。


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