[原子力産業新聞] 2007年4月19日 第2376号 <1面>

ロシア キリエンコ長官が来日記者会見 原子力協力協定の早期締結に期待 機器調達、共同事業を促進 日本で濃縮U備蓄構想も

ロシア原子力庁のS.キリエンコ長官(=写真)は12日、東京で記者会見を開き、日ロ原子力協力協定の早期締結に強い期待を寄せた。

キリエンコ長官は今回の来日の目的について、原産協会年次大会への出席を挙げ、日本とロシアの企業レベルの原子力協力関係を、さらに強化する強い意向を示した。ただ、原子力庁が日本の特定メーカーと提携締結したとの一部報道に対しては、「まだ話し合いを始めたばかりだ」と説明した。

そして、これまでのロシア原子力産業界は閉鎖性が問題だったとし、新たにアトムプロムを設立することにより、原子力産業の軍事部門と民生部門が分離され、閉鎖性は解消されると指摘。民生部門は透明性が重要であり、カザフスタンとの共同事業として運営されるアンガルスクのウラン濃縮センターのように、他国との共同事業による施設について、今後は積極的に国際原子力機関(IAEA)の査察下に置く意向を示した。

また日ロ原子力協力協定については、「双方の事務レベルでの準備が極めて早いテンポで進んでおり、9月末にも公式協議が開かれる」とし、早ければ年内にも作業が終了するとの見通しを示した。両国で協力協定が締結されれば、日露間で一次系機器の調達や、共同での第三国への機器納入も可能になるという。

ただし長官は、日本のメーカーがロシアへ機器を納入できるかどうかは、価格面での競争力次第だとし、ロシア国内に日ロの合弁企業を作るのもオプションの1つではないか、と指摘した。

キリエンコ長官はロシアが提唱する「低濃縮ウランの非常用備蓄構想」についても言及。同構想は日本側の要請によるものだとし、なんらかの理由による濃縮ウランの供給途絶を防ぐために、日本のユーザー(電力会社や燃料メーカー)の望む場所に設置する用意があると語った。非常用備蓄の所有権はユーザーに帰し、濃縮ウランの長期購入が条件だという。

記者会見には、燃料サイクル企業TENEX社のV.スミルノフ総裁も同席し、同社と日本の電力会社との過去15年にわたる友好関係を強調。「最初の10年間は挨拶をする程度だったが、今では専門家レベルの腹を割った話が出来るようになっている」とし、政府間の原子力協力協定の締結により、信頼関係をさらに拡大していきたいとの強い意欲を語った。


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