[原子力産業新聞] 2007年4月19日 第2376号 <4面>

第40回原産年次大会 【セッション1】「拡大する世界の原子力発電と原子力産業メインプレーヤーの展望」

〈基調講演〉 寺島実郎 日本総研会長 日本は自覚もって推進を 「国際エネルギー情勢と原子力」

まず第1に、エネルギー情勢の複雑化から話をしたい。石油価格は、いまや需要と供給で決定されるものではなくなっている。

第2には、地政学的な情勢不安の高まりについてだ。イラクが泥沼化し、イラン・シーア派が増勢。サウジアラビアを含め、中東地域は非常に不安定な状況となっている。その政情不安なペルシャ湾から、日本は石油の9割を輸入している。またロシアは、いまや世界第1位の石油・天然ガス生産国となった。エネルギーを武器に“エネルギー帝国主義”とさえ言われるほどだ。欧州は再生エネルギーで2割を供給するという大きな目標を掲げ、ロシアにエネルギーで生殺与奪の権を握られたくないので、必死だ。

第3の問題は、中国のエネルギー消費増大と環境問題だ。中国は著しい発展を遂げているがエネルギーの効率が悪く、エルギー消費と環境問題などを引き起こしている。エネルギー効率は日本の9分の1だ。

日本は「新国家エネルギー戦略」を制定し、原子力推進の「決意と覚悟」を決めた。私は技術基盤の蓄積の視点と、人材育成の重要性を指摘したい。

最後に、非核兵器国で再処理を国際社会から認められている意味を「どれほど自覚しているのか」と問いたい。世界が注目していることを忘れてはならない。


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