[原子力産業新聞] 2007年4月19日 第2376号 <6面>

第40回原産年次大会 【視点】原子力発電所新設ラッシュへ向けた「競争と協調」の構図

今は原子力のとき。満開の桜を愛でる春を待つ気持ちを持って将来に備えようー。これが先週、青森県で開催された第40回原産年次大会とIAEA設立50周年特別シンポジウムに参加した世界の原子力関係者による異口同音の共通認識だ。世界各国のエネルギー・セキュリティー、地球温暖化防止、それに米欧での「原子力ルネサンス」台頭と経済発展著しい発展途上国のエネルギー確保の必要から「原子力のとき」を告げる四重奏が響きわたり、課題を共有しながらも国際的協力で解決していこうというポジティブな原子力の国際会議となった。

こうした原子力の潮流変化に伴い、原子力産業の国際再編がうねりとなり、市場の国際化も劇的に進展している。今後少なくとも7、8年間は世界的に原子力発電所の新規建設ラッシュの売り手市場になることが確実で、原子力がビジネスにつながってきたことがまた、プラントメーカーのみならず、国益も左右する戦略分野としてクローズアップされている。

原子力発電所建設ラッシュの受注を狙いに、企業・国家間の大競争時代の到来といえるが、原子力は他産業と根本的に異なる点は、安全確保に齟齬があれば、地球規模でのリスクとなること、また、核不拡散問題や核燃料サイクルへの取り組み、高レベル放射性廃棄物処理問題など、ビジネスの観点だけでは解決し得ない側面が大きいことだ。したがって、世界的熱気を帯びる原子力ビジネスでは、単に競争相手を蹴落とすのではなく、秩序ある競争と協調が、原子力の時代の鉄則で、今回の大会でも競争より「パートナーシップ」がキーワードになった。

さて、このような原子力発電新時代における日本の位置づけはどうか。この点についても世界の認識はまったく一致しており、日本が原発先進国の筆頭で、欧米先進国、途上国を問わず、日本の協力が不可欠といわれる。この要因は、世界が20〜30年にわたり新規建設が途絶えた間、日本だけが建設を継続し、人材・技術者と設備機器の製造技術を維持してきた点にある。昨年来の国際再編で日本の3メーカーが主導権をとり、台風の目になれた背景だ。とはいえ、この日本優位は盤石でも、未来永劫でもない。原子力ルネサンスが加速、国際ビジネスの戦略分野になるにつれ、米、仏、ロシア、韓国等が官民一体となり、急速な巻き返しを期している。仏アレバ・グループのローベルジョン最高経営責任者は、「全世界で再認識されつつある原子力事業強化策として、昨年、送配電分野を含む技術者を7,000人採用、今年も同規模で雇用する」と明言した。

また、「日本市場でもアレバが暴れるかもしれない」と、2030年頃からのリプレース主戦場に照準を当てていることも示唆した。パートナーシップが大事といっても、ビジネスでは負けては明日がない。原子力開発競争で米欧のウサギが長期間眠り込んでいた間、営々と歩みを進めてきたカメ・日本は今、世界のリーダーたる自覚と次なる努力を求められている。


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