[原子力産業新聞] 2007年4月26日 第2377号 <2面>

地方からのレポート 番外編 北海道エナジートーク21 教育界、女性層との輪 拡大

日本原子力産業協会の地方関連組織の活動紹介シリーズの第3回は、北海道エナジートーク21(代表=向井慎一・北海道商工会議所連合会専務理事)で、このシリーズは最終回。

北海道電力の泊原子力発電所1号機の運転開始を1年後に控えた88年当時は、チェルノブイリ事故や原子力船「むつ」の放射線漏れ問題等が引き金となり反原発運動が拡大・緊迫した情勢にあった。これを踏まえ、北海道商工会議所連合会など経済8団体および北海道同盟友愛会議(労働団体)の9団体が結集して「原子力発電推進道民会議」(加盟団体・企業数約3万)を設立した。

その後2000年になり、泊発電所3号機の建設にめどがついたこと、および今後、エネルギーや環境問題が21世紀の地球規模で克服すべき課題になっているとの認識に立ち、組織、構成の見直しを行うとともに、「原子力発電推進道民会議」を「北海道エナジートーク21」に改称、現在に至っている。広範なエネルギーや環境問題にかかわる啓発活動を進めるが、それまでの経緯、エネルギー・環境問題に占める重要性からも、原子力発電の理解促進がかなりの部分を占める。

同時に、エナジートーク21は、その前身も含め特定の有力者や電力会社等のリーダーシップによるのではなく、経済団体を中心にした地域全体の自主的総意で成り立っている点が大きな特色で、代表も代々、北海道商工会議所連合会の専務理事が兼任している。また、会員は賛助金を負担する経済団体等の賛助会員(37会員)と活動の趣旨に賛同する賛同会員で構成されている。

エナジートーク21の活動は、@エネルギー関連施設視察・見学会Aエネルギー講演会B次世代層支援C女性層支援の4本柱。特に、@、Aは道民会議時代から継続してきたが、Bはエナジートーク21が発足後、将来的に最も重要であるとの認識のもとにスタートした。さらに昨年度から女性オピニオン層の組織化と活動支援も始めている。

まず、教育関係では、エネルギー環境教育の実践を目指して2002年に発足した北海道エネルギー環境教育研究委員会の活動支援の形で実施されている。同委員会の特徴は、各教科にとらわれず、また、小中学校から大学までの幅広い先生方が、あくまで自主的に活動している点で、当初、札幌市で15人でスタートしたものが、昨年までに260人に拡大した。通常、教育支援といえば、出前授業のように、生徒を対象に、講師が学校に直接出向くケースが大半だが、エナジートーク21では、先生方を対象に、しかも、自主的に取り組む委員会活動自体を支援する点がユニークだ。

同委員会は設立5周年の昨年、エネルギー環境問題にかかわる教育現場での幅広い教科の教員が一堂に会し、第1回全道研究大会を札幌市内の小学校で開催した。大会は、7つの公開授業から始まり、2年間の独自の教育カリキュラム作りに挑戦した軌跡、大学教授による「未来の世代にメッセージを送り続けることの重要性」の訴え、小学校の総合学習への取り組み等が発表された。

一方、日常生活の主役は女性なだけに、かねてから女性を対象にした女性によるエネルギー環境問題の理解促進活動への取り組みが課題だったが、昨年五月に「Ene Female21(エネ・フィーメル21)」を設立、新たな活動の輪を広げた。消費生活アドバイザーや元北海道電力のエネルギー・アドバイザーの女性5名がコアになり、まず「エネ・バスケット学習会」を開き、一般の公募で集まった女性たちとともに「北海道のエネルギー事情」、「身近な放射線とその利用」などのテーマでテーブルトーク方式で意見交換、考える場を提供し、泊発電所の見学会も催した。

また、札幌市の中学生のグループ訪問を受け、「身近なことで地球温暖化を防ぐには」をテーマにした総合学習に協力した。さらに、福井県敦賀市にある高速増殖原型炉「もんじゅ」を見学、合わせて「敦賀市女性エネの会」と情報交換するなど、自らの研修も行った。

このほか、従来から継続しているエネルギー関連施設見学・視察会では、昨年度事業のビッグイベントの1つとして、「欧州エネルギー・原子力事情視察団」が北海道商工会議所連合会、北海道経済連合会との共催でフランス、スイス、ドイツ3国を訪問した。特にプルサーマルが喫緊の課題となる中、燃料サイクルで先行する海外諸国の実情把握が主目的だった。

今年7月には、日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターにPRセンターが完成する。これを機会に講演会、見学会等の実施もいろいろ検討されているようだが、廃棄物処分問題の理解には、まだ時間がかかりそうだ。

いずれにしても、エナジートーク21の北海道におけるエネルギー環境問題への理解促進活動は昨年から一段と厚みを増してきた。

理解活動の手応え、今後の課題について、五十嵐博事務局長は、「次世代層支援としての教育界対応と昨年スタートした女性層支援を加え、少しずつ地道に活動していきたいというのが今の率直な思いで、それしかないような気がする」と堅実さを強調して結んだ。


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