[原子力産業新聞] 2007年5月17日 第2379号 <4面>

原子力機構 ITER用ジャイロトロン 発振効率55%以上を実現

日本原子力研究開発機構はこのほどITERのプラズマ加熱に使用するジャイロトロンで、高い発振効率が得られるものの発振自体が困難とされていた難発振領域における安定な定常発振に世界で初めて成功し、周波数170GHz、出力1MW、発振効率55%以上を達成した。

原子力機構は昨年、ITERの定常燃焼実験に使用できる1,000秒の定常発振(出力0.6MW、効率45%)に成功している。今回の成果はこの技術を発展させ、発振が容易な従来の運転領域から高い効率が得られる難発振領域と呼ばれる運転領域に、安定的に移行させる新しい制御技術の開発により達成したもの。

この運転領域は、発振が難しいが、一旦発振できれば高い発振効率が得られると理論的に予測されていた領域。まず従来領域で発振させた後、磁場を下げて難発振領域に入れる。これによりジャイロトロンは共鳴条件から外れ、167GHzの近傍モードに移行、出力が大幅に下がる。しかし、近傍モードで発生する電子の集団運動の中で正規モードが除々に成長、この成長が十分になると、近傍モードの助けなしに増大し、近傍モードは成長条件から外れ消えるという。

これまで近傍モードは邪魔と考えられていたが、今回、正規モードの成長を助けることを見出した。出力低下から正規モードの単独発振が復活し、1MWに達するまでの時間は、350n秒程度としている。


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