[原子力産業新聞] 2007年5月31日 第2381号 <4面>

中村浩美氏に聞く コミュニケーションのあり方 ラジオ「こども電話」の経験で

社会と原子力技術の関係について研究する鳥井弘之・東京工業大学原子炉工学研究所教授が、科学ジャーナリストの中村浩美氏(=写真左)を迎え、科学技術コミュニケーションをテーマに対談した。中村氏はラジオ番組「こども電話相談室」の回答者を長く務めたことから、スタジオでの体験談などを通じ、「次世代の知りたいはどこにある」という視点で、対話のあり方について模索した。この対談は、同大大学院総合講義の一環として、23日に行われた。

中村 「こども電話」は64年から続く長寿番組で、以前は月〜金曜の帯番組だったが、現在は週1回日曜に放送している。自分は主に科学の質問に答えた。子供からの質問を受け、司会の「お姉さん」が回答者陣の誰かに取り次ぐまでは、とても緊張する。「木星に衝突した彗星はその後どうなったか」とか、面白い質問もあった。

鳥井 専門用語を使わないで説明するうまい方法はないか。

中村 なかなか難しい。むしろ最低限の専門用語を覚えてもらうことも必要。回答者としてスポーツ選手、芸能人がゲスト出演することもあったが、専門外の人が説明した方が案外よく伝わることもある。

鳥井 説明に例えを使って失敗したことは。

中村 自分の専門で「飛行機はなぜ飛ぶの」はもう定番だった。自身の説明を専門家が聞いたとき、本当に正しいといえるかは疑問、例えで、かえって子供を混乱させてしまうこともある。

鳥井 テレビならば映像を伴うが、ラジオという媒体での特色は。

中村 正に、ここまで長続きしたポイントだ。かつて、NHKがテレビ特番を組んだが失敗だったと思う。テレビは、映像情報が強く、対話に集中できない。その意味で、ラジオは最も(パーソナル)なメディアといえる。

鳥井 子供たちの好奇心の源はどこにあるのか。

中村 身の回りの現象と、「楽しい」「恐い」といった感情とが、どこかでマッチすることからくるものか。それについて質問し、調べてみるという行動を起こし、そのことが周囲に評価されるということを期待するのかも。子供からは、「1+1=2」的に、単にデータを示せばよい質問もあったが、「宇宙の果ては」とか、もっと哲学的なことを聞いてくる子もいる。要は、「なぜ興味を持ったのか」ということを引き出し、「質問してよかった」と思わせること。相手を子供と見ず、正面からぶつかり、一緒に考えていくことで好奇心を育てることだ。

鳥井 犬も幼犬の頃、あちこち臭いをかいでまわるのは、自分の周りの世界を知りたいから。好奇心の源泉はやはり、「生きるため」ではないだろうか。

◇  ◇

鳥井教授によると、最近の高校生たちは、原子力に対する肯定・否定の考えでも、男女差が早い段階で顕著に表れてくるという。

同教授は現在、研究生の協力を得て、小中学生から高校生へと、物事への関心がどのように変化していくのか調査を進めている。


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