[原子力産業新聞] 2007年6月14日 第2383号 <2面>

エネ調・専門小委 安全基盤で5項目の提言 高経年化や燃料高度化のロードマップ

総合資源エネルギー調査会の原子力安全基盤小委員会(委員長=大橋弘忠・東京大学工学系研究科教授)は5日、報告書素案を審議した。

素案は同委員会がこれまで検討してきた「原子力安全基盤研究」「規格基準の策定と学協会の取組」「原子力安全分野の人材基盤」「研究施設基盤」「知識基盤」の5項目について、今後の安全基盤強化に向けた提言をまとめたもの。

安全基盤研究では、高経年化対応技術、燃料高度化技術を今後の重要課題とみて、それぞれ原子力学会、原子力安全基盤機構が策定した技術戦略マップを示した。その上で、これら戦略の定期的ローリングとともに、他の安全分野についても産学官協力で技術戦略マップを策定すること求めている。

燃料高度化戦略では、現行の55GWd/トンから70GWd/トンまでの引き上げで、約30%の使用済み燃料低減、それに伴う設備利用率10%向上で、約430億kWh/年(110万kWプラント5基分)の発電量増加とCO排出量の90年度比約2%削減が見込めると試算した。

規格基準では、日本原子力学会、日本機械学会、日本電気協会(3学協会)のとりまとめた「原子力関係規格・基準標準策定計画」に従って、「担い手は産業界」との認識のもと、策定を進めるとともに、同計画も必要に応じ見直すことを提言した。

人材基盤については、「社会インフラとして不可欠」「国のエネルギー政策の根幹」「産業界全体を左右」といった社会的ニーズを明確にアピールすることが重要と述べた上で、人材ニーズの技術分野を明確化し、そのリソースを把握する「原子力専門家育成マップ」を示して、ニーズ側・リソース側間の交流促進などを図ることとしている。産業界に対しては、企業倫理、安全文化等の向上・徹底に向けた方策を教育・研修に盛り込むこと、加えて、保修作業の技術・技能の民間資格認定制度の検討も求めた。

研究施設基盤については、日本原子力研究開発機構の原子炉安全性研究炉(NSRR)、材料試験炉(JMTR)等を「戦略的に重要な安全基盤研究施設」と位置付けた上、国民の理解獲得、産業界の積極的利用などに努めていくことを提言した。

社会安全分野の課題、知識基盤の整備・高度利用・透明性に関連して、委員からは「ヒューマンファクターが流行の如くとりあげられるが実際どう役立っているのか」「多くの情報に溺れてしまわぬよう的確な知識基盤整備を」といった意見もあり、これら等を踏まえ、次回会合で報告書とりまとめの詰めに入る。


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