[原子力産業新聞] 2007年6月21日 第2384号 <1面> |
がん対策基本計画 閣議決定 放射線療法等を重点化政府は15日、「がん対策推進基本計画」を閣議決定した。この4月に施行された「がん対策基本法」に基づき、医療体制整備、情報提供、予防・早期発見、研究など、今後5年間に向けたがん対策の基本的方向を定めるもの。特に、放射線療法、化学療法、緩和ケアの推進、人材育成、がん患者のデータを医療提供に役立てる「がん登録」の整備については、重点的に取り組むべき課題として掲げられた。 この日、閣議を終えた安倍晋三首相は、東京大学附属病院の放射線治療施設を視察(=写真、東京大学HPより)、基本計画にうたわれた重点課題への取組みについて、必要な予算確保を図る考えを記者団に述べた。 年間30万人以上の国民ががんで死亡している現状から、基本計画では、「がんによる死亡者の減少」「すべてのがん患者およびその家族の苦痛の軽減ならびに療養生活の質の維持向上」を全体目標として設定した。その上で、がん医療については、放射線療法と化学療法を推進し、これらと手術とを効果的に組み合わせた「集学的治療」を、がんの病態に応じて実施し、治療成績を上げることが重点課題の1つにあがっている。人材に関しては、近年の放射線療法高度化を踏まえて、治療計画立案、物理的な精度管理にも対応できる専門技術者の確保の他、各医療従事者の卒後研修を充実させ、皆が協力して診療に当たる体制整備に努めることを求めた。 厚生労働省「がん対策推進協議会」の委員、中川恵一・東大病院放射線科准教授は、「放射線治療件数をがん患者の25%から50%」「医学部における放射線治療担当教授の倍増」を今後10年間の目標として基本計画案に提案するなど、放射線治療と緩和ケアの推進を強く訴えてきた。中川准教授は昨年、安倍官房長官(当時)に放射線治療推進に向けた施策拡充を、患者団体の署名を示して要望した。安倍首相は3月の国会答弁で、国民の放射線医療に対する偏見・誤解を懸念した上で、専門医の育成、相談支援体制の拡充など、「各般にわたる対策を総合的に進めていく」考えを述べている。 |