[原子力産業新聞] 2007年6月21日 第2384号 <4面>

学術会議 エネと環境の両立策模索 技術、官民協力、しつけなど

既報の通り、毎年恒例の日本学術会議他学協会共催による「原子力総合シンポジウム」が先月末、2日間にわたり、東京・港区の学術会議講堂で開催された。初日の政治家討論に続き、2日目は、原子力・再生可能エネルギー開発、省エネの推進、CO削減に向けた取組について、各界専門家による講演が行われた。

国内外のエネルギー情勢について、十市勉・日本エネルギー経済研究所常務理事は、石油生産量は30年頃をピークに減少に向かい、非OPEC国からも供給されないと需要に追いつかなくなるとの予測を述べた。さらに、経済成長著しいアジアでは、1次エネルギー源の最も多くを石炭が占めていることと合わせ、ピークオイルと地球温暖化が将来的に「グローバルかつ深刻な問題」となると指摘した。日本では、省エネ推進、非化石燃料の拡大により、CO排出量は、30年の時点で1990年の水準を若干下回ると述べた。十市氏は、1次エネルギー供給比率が、30年で原子力20%、石油37%、さらに、50年までの長期シナリオ「バックキャスト」で、それぞれ30%、20%との見通しを示し、当面は「技術で資源、環境の制約を抑えていく」とした上、「30年頃では原子力はまだ大きな貢献にはならないが、長期的には推進していく必要がある」などと結論付けた。

原子力発電について、新田隆司・日本原子力発電常務取締役は、東海第二の5%出力増強計画を、米国における計500万kWの出力向上認可の実績をバックに説明したほか、150万kW級APWR敦賀3、4号機の進展、次世代軽水炉開発、同社独自の中小型炉開発について紹介した。

新エネ・自然エネでは、疋田知士・エネルギー総合工学研究所技術情報センター長が、バイオエタノール、製紙業の黒液・廃材、水力、地熱、太陽光、風力の開発・利用の現状を述べ、いずれもコスト、安定性など、克服すべき課題が多いことから、普及に際しては、「官民挙げた一層の努力が必要」と指摘した。

駒田広也・電力中央研究所地球工学研究所首席研究員は、COを超臨界状態にして地中に貯留する技術を紹介、既にカナダ、ノルウェーで実用化されており、日本の貯留ポテンシャルも1,462億トン―CO(国内年間排出量の約110倍)程度見込めるという。

民生家庭部門の省エネ対策について、環境エネルギー総合研究所の大庭みゆき氏は、夏休みの子供がいる家庭で、冷蔵庫の開閉が日に数百回にも達することなどをあげ、幼児期からのしつけに始まり、生活者の視点でエネルギー問題を現実にとらえ、解決策を考えさせる次世代教育の必要を強調した。


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