[原子力産業新聞] 2007年7月12日 第2387号 <1面>

厚労省 香辛料の輸入検疫で 照射食品の検知法導入

厚生労働省は6日、輸入香辛料が放射線照射されているかどうかを調べる公定検知法を初めて指定し、同日、全国の検疫所に香辛料の輸入に当たっては、抜き取りで照射の有無を検査するよう指示した。

日本では照射食品としてジャガイモの芽止めのみが許可されているだけで、世界各国での実用化状況からは大きく遅れている。食品照射の普及を図るためには、公定検知法を定めることが必須で、今回の公定検知法の導入で、少なくとも制度的には食品衛生法改正に向けた新たな一歩と受け止める関係者もいる。

同省の食品安全部長の通達によると、「研究結果から、放射線を照射した食品を検知できる場合があることが明らかになった」ことから、香辛料を対象に「熱ルミネセンス(TL)法」を指定した。

同法は、輸入香辛料からサンプル試料を抜き取り、その中の微量の鉱物質を抽出して、その一部に放射線を一定量あてて標準試料を作り、この標準試料とTL測定装置で発光量を比べることによって、照射の有無を確認する。

全国の検疫所は約30か所ある。標準試料を作成する標準線量の照射は大阪府泉南郡の原子燃料工業・熊取事業所で行う。照準線量は1kGyを、コバルト60ガンマ線か10MeV電子線照射する。来年3月までの検査検体数は全国で計119件を計画しており、放射線照射が検知された場合には、食品衛生法第11条違反として、その輸入香辛料は回収、廃棄、輸出国への返送などの措置を取らなければならない。

財務省の輸入統計によると、05年の香辛料輸入量は約6万5,000トン、166億円。現在でも、書類審査などで検疫検査がなされてはいるが、照射による影響は極めて少なく、その検知が困難であるため、輸入香辛料の5%程度は、照射された香辛料が輸入されているとみる専門家もいる。

全日本スパイス協会は2000年12月、当時の厚生大臣宛に香辛料の放射線照射の許可申請を提出している。


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