[原子力産業新聞] 2007年7月26日 第2389号 <2面>

鈴木安全委員長が所感 再改訂議論の状況でない

鈴木篤之・原子力安全委員長は19日、新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所の安全性について所感を述べた。今回の地震で、原子炉施設の設計想定値を上回る地震動が観測されたことに関して、「安全が直ちに損なわれるものではない」としながらも、詳細な解析評価に基づく耐震安全の確認を早期に実施するよう事業者、規制当局に求めた。新耐震設計審査指針の有効性については、現在進められているバックチェックを通じて明らかにされると述べ、「新指針の再改訂の要否を議論すべき状況にはない」と、同委員会としての考えを示した。

この日の安全委会合で、地震に伴う柏崎刈羽発電所への影響全般について、原子力安全・保安院から報告があったほか、同3号機で発生した変圧器火災での現場対応等、東京電力から説明を受けた。国への法令報告事象以外で、安全委員会が事業者から直接報告を求めるのは異例のことだ。

東京電力によると、地震直後に変圧器の発煙を発見するも、電話輻輳で119番がつながらず、社員ら4名で応急的に放水を始めたが、消火栓の損壊で水量が弱く、火勢には太刀打ちできなかった。所内の自衛消防隊も、各方面への連絡対応に追われて招集できず、火災発生から1時間以上経過して、地元消防隊が到着、消火活動を開始し、約2時間後に鎮火した。

これら火災への対応について、鈴木委員長は所感の中で、他の防災対応に際しても教訓として活かす観点から、必要な検討をできるだけ早期に進めていくとした。

また、新指針に照らしたバックチェック実施計画に基づき、柏崎刈羽発電所を対象とした地質調査が既に終了しているが、今回地震を引き起こした断層が発電所敷地の直下付近を含む陸地内に潜り込んでいる可能性が気象庁から指摘されていることから、事業者に対し、「必要な追加的調査を早急に実施すること」を求めた。

同日会合に先立ち、東邦夫・安全委員長代理らは、柏崎刈羽発電所の現地調査に訪れている。


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