[原子力産業新聞] 2007年7月26日 第2389号 <5面>

発電所での大統領演説から ブッシュ大統領がブランウンズフェリー原発訪問 「2015年以降、毎年3基の新規建設を」 「原子力産業は最も安全」 ブラウンズフェリー再生を語る

本紙6月28日号で既報の通り、ブッシュ米国大統領は6月21日、1号機が長期運転休止から22年ぶりに運転を再開したブラウンズフェリー原子力発電所を訪問し、原子力発電所の新設を呼びかける演説を行った。本号では大統領演説の原子力関連部分を抜粋して掲載する。

ブラウンズフェリー原子力発電所1号機は、この十余年の間に米国で運転を開始した最初の原子炉です。これは米国が、工期内および予算内でプロジェクトを遂行できる能力があることを示しております。皆さんの大変な働きに対してお祝いを申し上げるとともに、米国への貢献に感謝いたします。

私は、21世紀にわれわれが直面するであろう課題、例えそれがエネルギー自給や経済的安全保障または望ましい環境政策のいずれにしても、それらに対処するためには包括的なエネルギー政策が不可欠であると信じております。さらにその政策の中心には、原子力発電が位置することは間違いありません。

世界は原子力平和利用の展望と可能性に注視しています。私は「平和利用」という言葉を強調します。それは私の先任者の1人であるアイゼンハワー元大統領が1953年、原子核エネルギーから、人類の恐怖ではなく人類の需要に応える平和的な電力を生み出す方法を発見するため、世界中の科学者と技術者に呼びかけました。これが原子力発電です。皆さんはアイゼンハワー元大統領のビジョンの実行に貢献しているのです。

原子力は米国の電力の約20%をまかなう、国内で3番目の基幹電源です。米国民の多くがそのことを理解しているかどうか分かりませんが、原子力は経済的活力の鍵を握っているのです。

大変興味深いことに、フランスでは電力の78%、スウェーデンでは50%、欧州連合(EU)全体では30%を原子力がまかなっています。中国では9基の原子炉が稼動中で、今後20年間でさらに多くの原子力発電所を建設するという意欲的な計画があります。

地球温暖化対策

原子力は広く普及し、米国のみならず世界中でなくてはならない電源だと認識されています。原子力はクリーンな国産エネルギーです。私たちは次の世代のために環境をより良い状態で残したいと思っています。私は地球温暖化問題を、非常に深刻な問題と受け止めています。

それゆえ、私は温室効果ガスへの関心を共有する人々に対し、原子力が温室効果ガスを排出しないということを繰り返し指摘しています。もし皆さんが地球温暖化問題に関心があるならば、原子力を支持すべきではないでしょうか。米国に原子力がなければ、大気中のCOは毎年およそ7億トン増加するでしょう。気候変動に対するただ1つの解決策はありませんが、原子力なしの解決策もありえないでしょう。

原子力は安全です。原子力産業は米国で最も安全な産業の1つです。科学とエンジニアリングの進歩および最新のプラント設計により、原子力発電所は前世代以上に安全なものとなりました。技術は進歩し、知識は進歩し、エンジニアリングも進歩したのです。ここは安全な発電所であり、米国民はそれを理解しなければなりません。

原子力規制委員会(NRC)のスタッフが毎日査察を行うため常時発電所に駐在していることは知られてきておりますが、本日ここにいらっしゃるNRCスタッフの皆さんにも感謝します。「ここは安全な職場であり、あなた方が住む地域にとっても安全な施設である」と米国民に対して高らかに宣言出来る時代になったのです。

供給安定性

原子力は経済性が高く、供給も安定したものです。ひとたび原子力発電所が建設されれば、燃料費と運転コストは低く維持できます。原子力発電による電力価格は安定しており、予測可能です。この電力価格は天然ガス火力のように変動することがありません。さらに風力のように発電が断続的になることはありません。原子力は信頼できる低コストのエネルギー源なのです。

今後、原子力はより大きな役割を果たさなければなりません。包括的なエネルギー戦略や長期エネルギー計画について議論する際、原子力はわれわれの将来にとって、非常に重要な地位を占めています。

原子力は、増大する電力需要を満たすことの出来る、大規模かつCOを排出しない唯一の電源なのです。米国経済が成長するにつれ、電力需要が増えますが、原子力はこれらの需要に対処することが出来るのです。

新規建設の促進

電力需要に応えるためには、2015年以降、毎年平均3基の新規原子力発電所を建設する必要があります。さらに気候変動に対処するためには、それ以上を必要とするかもしれません。

しかし米国は1970年代以降、新規原子力発電所の発注を行ってきませんでした。その原因は、訴訟攻勢にさらされ続けたこと、そして米国の規制体系が過度に複雑だったことなどです。したがって現在、こうした障害の克服に取り組んでいるのです。

私はテネシー峡谷開発公社(TVA、ブラウンズフェリー発電所の所有・運転者)が原子力を推進する決定をしたことを高く評価します。米国が再び原子力発電所を建設する時が到来しました。

環境にやさしい、包括的で、適切そして賢明なエネルギー政策に関心があるのであれば、新規原子力発電所の建設を実行するべきです。

政府の支援

連邦政府はいくつかの重要な方法で原子力利用の拡大を支援しようとしています。

まず、「原子力発電2010イニシアティブ」を打ち出しました。これまでに新規建設を妨げる、少なくとも新規建設を思いとどまらせるような規制上の負担があったことも承知しております。われわれが立ち上げたこのイニシアティブは、官民一体となって新規原子力発電所の建設に対する規制やその他の障害を減らすことを目指しています。

私が提出した2008年度予算では、このイニシアティブのために要求された2倍の1億1,400万ドルが計上されています。このイニシアティブを進展させるには、資金が必要なのです。そしてわれわれは連邦議会に対し、予算をつけるよう要求しています。これは当然のことであり、常識的な戦略であります。

NRCは原子力発電所の建設促進を支援するため、規制プロセスの改善と合理化に取り組んでいます。旧システムの下では、許認可プロセスは非常に遅々としたものでした。この会場にいらっしゃるベテランの方の中には、それを思い出す人もいるかもしれません。非常に面倒なものだったのです。

なぜなら旧システムでは、事業者が着工前に一度ですべての手続きを完了することを、禁止していたのです。一度にただ1つの手続きしかできず、承認を受けた後、さらに別の手続きを行うという、気の遠くなるような時間を要したのです。

建設に時間がかかれば、資本や人々は先に進む意欲を失います。さらに、常に訴えられるリスクを背負わねばなりません。これでは人々の意欲を失わせるには十分です。

改革進む規制制度

NRCは、安全性を損なうことなく、事業者が一度に複数の手続きを完了させることが可能な、より効率的な許認可手続きを実施しています。NRCは現在、最大30の新規原子力発電所を対象とした建設・運転一体認可(COL)について、20件は申請があると予想しています。事態は変わり始めているのです。

考え方は変化しつつあり、規制プロセスも変化しつつあります。このことは米国の消費者にとって良いニュースです。

私は2005年に、新規原子力発電所の建設者に対する連邦政府によるリスク保険や、融資保証、発電税控除など、原子力発電開発を支援する重要なイニシアティブを含むエネルギー法案に署名しました。原子力産業を再始動させるために、投資家が発電所建設を進めるインセンティブを生み出すためです。

バックエンド問題

われわれは、放射性廃棄物処分問題の解決にも取り組んでいます。5万5,000トン以上の使用済み燃料と高レベル廃棄物が39州、100地点に貯蔵されています。私は使用済み燃料の処分場としてユッカマウンテン(ネバダ州)の許認可を進展させるため、4億9,500万ドルの予算案を提出しました。

再処理に取り組み

しかしもう1つ構想があります。われわれは再処理技術の開発に力を注ぐべきです。われわれは使用済み燃料を処理するこの新しい技術に、力を注ぐべきです。

そこで私は、フランス、日本、中国やロシアなどの進んだ民生用原子力計画を持つ国々と協力するため、国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)を提案しました。GNEPを提案した理由は、新しい技術を利用、つまり使用済み燃料の効率的で安全なリサイクル技術を開発・利用するためです。

再処理により、より多くのエネルギーを抽出することが可能となるうえ、貯蔵する放射性廃棄物の量が最大90%削減できる可能性が生まれるのです。私は、その燃料を処理するために必要な技術が、飛躍的な進歩を遂げることが出来ると確信しています。

連邦議会は、再処理技術予算を手当てする必要があります。そうなれば、われわれは「使用済み燃料を使って何をするの?」などといった多くの非難に答えることができるでしょう。

使用済み燃料をリサイクルし、再燃焼し、問題を減らす──それこそが、米国がなすべきことなのです。


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