[原子力産業新聞] 2007年7月26日 第2389号 <6面>

京大・原子力機構 小型がん治療装置用 レーザー駆動陽子線を単色化

京都大学化学研究所と日本原子力研究開発機構はこのほど共同でレーザー駆動陽子線に、適切な周波数の高周波電場を作用させることにより、単色のエネルギースペクトルをもつ陽子線に変換し、この陽子線を繰り返し生成することに成功した。小型陽子線がん治療装置を実現する基礎技術としている。

レーザーを金属や高分子などの物質に照射することにより発生させるレーザー駆動陽子線は、陽子速度が幅広く、産業や医療分野で利用するためには、この速度を一定に揃える(エネルギースペクトルを狭め単色化する)とともに、速度の揃ったビームを繰り返し生成する必要がある。

今回、陽子線に特定の高周波電場を作用させる手法を世界で初めてレーザー駆動陽子線に適用することで、単色のエネルギースペクトルを持つ陽子線を繰り返し生成することに成功した。同電場をかけることにより、ある速度より速く進む陽子は減速し、これより遅く進む陽子は加速することで揃えるという。

実験では、原子力機構の小型チタンサファイアレーザーをピーク出力1テラW、パルス幅210フェムト秒で、チタンのテープターゲットに集光し、幅広い速度分布を持つ陽子線を繰り返し発生。この陽子線をその中のあるエネルギーを持つ陽子の飛行時間に同期させて周波数80Mヘルツの高周波電場空間を通過させる。各陽子はそれぞれが持つエネルギーによって速度が異なるが、減速と加速がバランスされるよう、ターゲットと電場空間との距離を最適化することで準単色化された陽子線を生成する。


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