[原子力産業新聞] 2007年8月9日 第2391号 <2面>

電気分科会・制度改革WG 全面自由化は見送り 原子力投資への影響も懸念

総合資源エネルギー調査会の電気事業分科会(会長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)は7月30日、制度改革WGによる小売自由化範囲拡大に関する検討結果を審議した。同WGは「現時点での拡大は適切でない」とし、同委員会もこれを了承した。原子力に関しては、全面自由化を行う場合には新・増設への投資の影響などに関し、慎重な検討が必要とした。

同分科会では、小売全面自由化に関し慎重な意見が多いが、制度改革WGは、@需要家の選択肢確保の状況A拡大に係る費用便益分析B拡大が電気事業者の企業行動に与える影響――を検討した。この結果、既自由化部門で需要家選択肢は十分に確保されておらず、この状況での拡大は家庭部門にメリットをもたらす期待は少なく、むしろ社会全体の厚生が損なわれ、拡大に伴う費用が便益を上回る懸念があると指摘。今審議では卸電力市場の活性化、託送制度のあり方などの制度改革を検討すべきとした。

また全面自由化と発電設備投資全体の間に明確な関係は見いだせないが、電源構成に影響を与える可能性は否定できないと指摘。全面自由化を行う場合には原子力発電の長期投資、長期契約のリスク、特に新・増設投資への影響について十分慎重に検討すべきとした。併せて地球環境問題や1次エネルギー価格の上昇を受け、原子力の競争力が向上、自由化が進展した欧米諸国で原子力回帰の動きが顕著なことなども示した。

委員からは、「WGの結論に賛成する。改善すべき点は改善し、より良い競争を行うべき」(勝俣恒久・東京電力社長)、「我々(PPS=特定規模電気事業者)としては残念な結論。基本的にはWGの結論を了承するが、消費者の自由化への期待は大きく、次回の検討開始時期の目安を示すべき」(武井務・エネット社長)などの意見が出された。


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