[原子力産業新聞] 2007年8月9日 第2391号 <3面>

米国 TVA ワッツバー2を建設再開へ 新規建設よりも経済的と判断

テネシー峡谷開発公社(TVA)は1日、ワッツバー2号機(PWR、121万kW)の建設再開方針を決定した。5年間で24億9,000万ドルを投じ、2013年までに建設を完了させる計画だ。同機はほぼ完成していたが、規制当局の運転認可審査が大幅に遅れたため、1985年から建設が中断されていた。

今後TVAは、米原子力規制委員会(NRC)にワッツバー2号機の建設再開を通知し、建設作業と並行してNRCへ運転認可を申請する。これは同社が10CFR50と呼ばれる古い許認可手続きに基づき、1973年に発給された同機の建設認可を保持しているためで、事前サイト許可(ESP)や建設・運転一体認可(COL)など新しい許認可手続き(10CFR52)に基づく新設プロジェクトとは一線を画している。

運転認可の申請にあたってTVAは、安全解析書の最終版や環境影響評価報告書等をNRCへ提出する。またNRCも、同認可の発給に先立って独自の環境影響評価を実施することになる。

TVAによると、同社の所管エリアの電力需要は増加傾向にあり、2008年から2013年にかけて計380万kWの新規発電設備容量が必要だという。またTVAは、建設コストを含めた1,000kWhあたりの発電コストを試算し、コンバインド・サイクル・ガス火力発電所78ドル、新規原子力発電所58ドルに対し、ワッツバー2号機44ドルとの結果を得ている。さらにTVAは同2号機の運開により、年間600万〜800万トンのCO排出量が削減されるとし、同機の建設再開を最良のオプションと結論した。

TVAは1973年、米原子力委員会(AEC、当時)からワッツバー原子力発電所(ウェスチングハウス社製PWR×2基)の建設認可を発給され、両機を着工した。建設認可では、両機合わせてネット出力254万kWまでが承認されている。

その後TVAは76年、NRC(AECから役割を引き継いだ)に運転認可を申請。しかし、79年に起こったTMI事故の影響で新たな安全規制が要求されたことや、オイルショックに伴う電力需要自体の低迷などから、NRCによる審査は大幅に遅れた。そのためTVAは85年、運転認可取得の不確実性を理由に、両機の建設を中断。さらに95年には、2号機の建設の延期を決定した。

85年の建設中断時点での2号機の工事進捗率は80%で、プラントとしてはほぼ完成していた。しかし機材の中には、原子炉冷却ポンプやバルブ類など、TVAが所有・運転する他の原子力発電所にすでに流用されているものもある。また、1号機と同等の出力増強や改良工事を施すことも考慮すると、現時点での2号機の工事進捗率は60%程度である。

原子炉建屋、タービン建屋、コントロール建屋や冷却塔など主要施設は建設済みであり、今後の建設作業は、細かな内部機器の点検・交換が中心となる。

TVAは、ブラウンズフェリー1号機の運転再開プロジェクトを経験していることから、人材の確保や資機材調達には自信を持っている。唯一の懸念材料は、NRCによる運転認可発給が遅れることだという。


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