[原子力産業新聞] 2007年8月9日 第2391号 <4面>

広島大学と原子力機構 つる植物をイオンビーム育種 環境浄化に適す新品種

広島大学と日本原子力研究開発機構はこのほど共同で、イオンビーム育種技術により、これまでのヒメイタビに比べ二酸化窒素浄化能を40〜80%向上させた新品種「KNOX」(仮称)の作出に成功した。

ヒメイタビ(=写真)はつる性の常緑樹で壁面緑化に適し、高速道路や工場周辺などを緑化することにより、大気中の窒素酸化物などの浄化に役立つと期待されている。

両機関は今回、無菌的に生育させたヒメイタビの外植片に炭素イオンビームを照射し、その外植片を培養することで再分化体を取得。この細分化体を順化した後、二酸化窒素浄化能が親植物に比べて高い突然変異株を選抜した。

選抜は、葉に取込まれた二酸化窒素由来の全窒素量と有機窒素量(取込まれた二酸化窒素のうち代謝された量)を比較するという手法で実施。安定同位体で標識した二酸化窒素を1ppmの濃度で植物体に8時間曝露し、洗浄・乾燥後、元素分析計と安定同位体比質量分析計で定量。全窒素量は試料粉末から直接定量し、有機窒素量は試料粉体をケールダール分解した後に定量する。

イオンビーム照射は原子力機構のTIARAで行い、約2万5,000の外植片から得られた約500個体を分析、新品種の選抜に成功した。

挿し木で増殖したものでも同様な結果が得られ、形質が安定していることから農林水産省に品種登録出願した。

新品種は外観や生育上に差異はなく、壁面緑化植物としての適正はこれまでのヒメイタビと変わらない。


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