[原子力産業新聞] 2007年8月30日 第2393号 <3面> |
米産業界要人に本紙インタビュー 「米原子力 好調の要因は?!」来日中のS.ピーターソン米国原子力エネルギー協会(NEI)広報担当副理事長とA.ビスコンティ・ビスコンティリサーチ社長にインタビューした。(河野清記者) ――米国の現在の原子力発電所の好成績の要因を一言で言うと何か。 ビスコンティ社長「最も安全な原子力発電所が、最も経済性が高い」ということが分かったことだ。 ピーターソン副理事長10年ほどの間に米国の電力経営者や技術者たちが海外でのベスト・プラクティス(最良事例)を学んできたこと。電力業界にも競争原理が導入され、安全運転や訓練の重要性に加え、信頼性、効率性も考慮し、低コストで発電できることを証明し、業界全体でそのことを共有したことだ。 ――具体的には。 ピーターソン副理事長7年前に米国では原子力規制委員会(NRC)の規制方法が変った。それ以前は目標を定め、1つ1つ規制していた。現在では検査をNRCの指示に従って実施するのではなく、電力会社が自ら決めてやることになった。特に安全性に関する箇所を重点的に検査するようにした。 ――日本では現在、法令で13か月に1回はプラントを停止して機器の点検などを行い、一部の燃料交換も行っているが、米国ではそのような規準はあるのか。 ピーターソン副理事長プラントの停止は、主に燃料交換のために行っている。サイトにはNRC検査官が常駐し、毎日NRC本部に報告している。年間2,500時間検査しなければならないことになっており、米国ではプラントの運転・停止に関わりなく、言ってみれば「毎日検査している」ということになる。 ――デービス・ベッセ原子力発電所で02年3月、圧力容器上蓋のホウ酸による腐食が発見された(国際事故尺度で3)。発見が遅れ、圧力容器から一次冷却水が漏出していたら、現在のような良好な世論もなく、TMI事故以降のような過剰規制の状態に逆戻りする可能性はなかったのか。 ビスコンティ社長TMI事故のときはコミュニケーションがまずかった。デービス・ベッセの場合は、@安全に停止し、けが人もいなかったA適切な措置が取られ、再発防止がなされたB圧力容器上蓋の交換時にはマスコミにも公開した――など、迅速に効果的に情報発信した。 ピーターソン副理事長79年のTMI事故時に比べて、電力業界、規制当局、一般公衆ともに成熟している。当局の対応も適切で、特定の事業者の特定の問題として必要以上の検査は求めなかった。 ――たとえば今、デービス・ベッセで一次冷却水の漏洩事故が起こったとしても、TMI事故以降のような状態に戻ることはないと……。 ピーターソン副理事長、ビスコンティ社長仮定の問題だが、結論は“イエス”だ。 ――好調な米国の原子力発電所も現在がピークで、高経年化に伴い、今後はそうも行かなくなるのではないか。 ピーターソン副理事長まだ設備利用率を数%は伸ばす余地はあると考えている。今後も安全性をないがしろにすることなく、高稼働を維持していきたい。 (4面に関連記事) |