[原子力産業新聞] 2007年9月6日 第2394号 <1面>

日独シンポ 09年選挙に注目「独原子力再評価も」

ドイツのアンゲラ・メルケル首相が日本を訪問し、8月30日には東京・大手町の日経ホールで開かれた日独経済シンポジウム「環境と成長の調和――日独の役割&協調」で基調講演を行なった。

メルケル首相は、97年12月の地球温暖化ガスの国別削減を決めた京都議定書締結時の独環境相で、地球環境問題には思い入れも強い。

EUでも現在、2%の温暖化ガスの削減実績(その75%がドイツの貢献)しか達成しておらず、あと6%の削減が義務付けられているのが実情だが、同首相は削減目標達成のために日独の果たすべき役割の大きさを強調、特に“京都”議定書の名がつく日本の先導的な役割に期待した。

同首相の基調講演の後、日本経済新聞の岡部直明主幹の司会で、ユルゲン・トゥーマン独産業連名会長、ユルゲン・ハンブレヒトBASF社会長、米倉弘昌・住友化学社長、石田徹・経済産業省産業技術環境局長がパネル討論を行なった。

この中で、原子力問題も主要なテーマとなり、トゥーマン会長は、2050年までに50%削減するより、13年の目標達成の方が難しいとし、「原子力発電からの撤退がドイツを特殊な状況に置いている」と指摘。原子力発電の運転期限の延長が可能であれば、目標は達成できるとみている、と語った。

ハンブレヒト会長も「原子力発電は環境汚染の少ない技術だ」と認め、「水素燃料はまだまだ実用化が難しい。コストを考えずに環境問題を論ずることは意味がない」と述べた。

米倉氏も「アフリカのサハラ砂漠で100平方キロメートルに太陽光発電パネルを敷き詰め、超伝導でEU、米国、アジアを結べばエネルギーの世界的供給は可能だと言われるが、途方もない資金がかかる」と述べた。

石田局長は、「原子力発電は安全が大前提だが、一定規模のCO削減が可能だ。アジアでも具体化されようとしており、核不拡散の枠組の中で協力して行きたい」と語った。

さらにトゥーマン会長は、現在の独政権の大連立与党体制について、首相と15人の閣僚は、首相をはじめ8人がキリスト教民主社会同盟、8人が社会民主党で、05年の連立協議で、過去に決まった「原子力発電撤退」政策などは不変となっていることを説明したが、「国民世論も考え方が変りつつある。09年の選挙でもう一度考え直すチャンスがあるのではないか」と指摘した。

ハンブレヒト会長は、「原子力の政治的決定によって、産業界は技術開発力など競争力を失っている」と述べ、いまは新技術などに注力している、と語った。


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