[原子力産業新聞] 2007年9月13日 第2395号 <3面>

イタリア 原子力発電の再導入を検討 エネ・セキュリティの観点から

脱原子力政策を堅持しているイタリアで、原子力発電プログラムの再開を勧告する内容の報告書が8日に公表され、話題となっている。これは、イタリア電力公社(ENEL)がコンサルティング会社アンブロゼッティに委託して取りまとめたもので、ENELが進むべき今後の方向性を示した内容となっている。

報告書は、「イタリアのエネルギー・セキュリティのために電源構成の見直しが必要」と指摘。原子力発電の再導入や、風力など再生可能エネルギーの開発促進、CO排出量の削減技術の開発、省エネルギー技術の開発などを提言している。そして、欧州連合(EU)加盟国の中でイタリアの電力料金が極めて高い水準にある要因の1つとして、同国の石油火力や天然ガス火力への過度の依存体質を挙げ、石炭火力への転換を推奨している。

こうした内容を踏まえ、すでにENELは、今後5年間に40億ユーロを投じて、再生可能エネルギーによる電力供給拡大、CO排出削減技術や省エネ技術の開発を実施する計画だ。また同じく40億ユーロを投じて、主要な火力発電所を石炭火力に転換する計画も進めている。原子力発電プログラムの再開についても、今後、政府を巻き込んで検討されるものと思われる。

イタリアではかつて、1982年に閉鎖されたガリリアーノ発電所のほか、カオルソ発電所、トリノ・ベルチェレッセ発電所、ラティナ発電所の3基の原子力発電所が運転中だった。また1982年の国家エネルギー計画では、合計6基の原子力発電所を建設することが盛り込まれていた。

しかし1986年にウクライナで発生したチェルノブイリ事故を契機に、イタリアはあっさりと脱原子力の道を選択した。事故を教訓に各国が原子力安全文化の浸透に注力する中、イタリアは1987年に実施された国民投票結果を受け、原子力発電所の建設プロジェクトを中断し、設計上の問題も無く順調に運転中だったすべての原子力発電所を、1990年までに閉鎖した。さらに燃料サイクル関連施設も閉鎖された。

しかしイタリアは、電力供給の約15%を輸入電力に依存している。2003年には数度にわたって大規模な停電に見舞われるなど、電力需給が逼迫しており、電力価格の上昇も相まって、国内の電力供給力強化が大きな課題となっている。

また表面的には脱原子力を達成したように見えるが、輸入電力の大半をスイスとフランスに依存している。その上スイスからの輸入電力の約半分は、スイス経由の迂回ルートをたどって送られている原子力大国フランスからの電力で占められている。ちなみにスイスの原子力シェアは約3〜4割、フランスは約8割強である。

こうした中ENELは、電力供給の確保や事業拡大のため、海外に活発に進出している。2004年にはスロバキア電力の政府保有株のうち66%を買収し、スロバキアの原子力発電所の建設再開プロジェクトを実施している。またENELは、フランス電力公社のフラマンビル3号機(EPR、160万kW)建設計画へ資本参加(12.5%)し、エンジニアを派遣するなど原子力技術の維持をねらっている。


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