[原子力産業新聞] 2007年9月27日 第2397号 <1面>

原子力委 ビジョン懇が初会合 国民の視点で議論整理 環境とエネ供給焦点に 座長に山本東大生産研教授

原子力委員会の「地球環境保全・エネルギー安定供給のための原子力のビジョンを考える懇談会」(座長=山本良一・東大生産技術研究所教授)は20日、初会合を開き、地球温暖化対策などに対する原子力の貢献について幅広い議論を開始した。山本座長は「国民の視点で議論を整理したい」と挨拶(=写真中央)、各委員が論点を提起した。今後、月2回程度のペースで議論、来年1月中には提言を取りまとめる予定。

初会合で近藤駿介・原子力委員長は、「2050年までに温室効果ガス排出を半減するという目標に向け、骨太の議論をお願いしたい」と要請。山本座長は、「温暖化のリスクを深刻に考えるべきで、二酸化炭素と高レベル放射性廃棄物を同じように、パラレルに考える必要がある。国民が広い知識を持ってエネルギーを選択すべき時期であり、これがないと原子力も発展しない」とした。

今会合で内閣府の原子力政策担当室はエネルギー・環境問題、世界的な対策検討の動向、原子力利用状況などを説明。論点として、@原子力の特長を活かし世界的な利用を拡大できれば、原子力はエネルギー安定供給と地球環境保全に貢献する有効な手段の1つになり得るのではないかA世界的な原子力利用に際し、解決すべき課題は何か――を提示した。

委員からは、「アジアのエネルギー需要増大に日本の原子力がどう係わるかが重要。国と企業の役割分担の再検討を」(十市勉・日本エネルギー経済研究所専務理事)、「原子力は1つのオプションで唯一の技術ではないと考えるが、アジアとの関係は大きな視点」(和気洋子・慶応大教授)、「20から30年後には石油が無くなり、新エネも量的に無いことをまず理解すべきであり、日本の技術を輸出することが重要」(片山恒雄・東京電機大教授)、「市民の間でも温暖化への危機感は高まっているが、市民が原子力を話合える雰囲気や場がない。草の根運動も必要」(崎田裕子・環境カウンセラー)、「発展途上国の対応が重要で、原子力をCDMの対象にする可能性を検討すべき。国内視点と国際視点に分けた検討を」(浅田正彦・京大院教授)、などの意見が出された。


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