[原子力産業新聞] 2007年9月27日 第2397号 <2面>

中越沖地震・情報連絡WG 自衛消防隊強化策を示す

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会「中越沖地震における原子力施設に関する自衛消防および情報連絡・提供に関するWG」(主査=大橋弘忠・東京大学工学系研究科教授)の20日の会合で、原子力安全・保安院は、即応能力、消火能力、活動持続能力を柱とする自衛消防体制の強化策を打ち出した。

柏崎刈羽原子力発電所で発生した火災事例から、課題を整理し、その上で「通報・消火活動を迅速に実施し火災の被害を最小限度に」、「大規模災害時には公設消防が直ちに消火活動が行えない可能性についても考慮」、「消火配管損傷時にも消火活動が可能となるように」――の視点に立ち、自衛消防体制強化の具体策をソフト・ハード面から提示した。

消防との専用回線については、緊急時対策室の扉が故障し使用できなかった反省から、中央制御室等、耐震性を有する場所への機器設置を提案した。加えて、消防車両車庫の強度確保、地震による損傷事例を踏まえた消火設備の信頼性向上にも言及し、ハード面の即応能力強化を指摘している。消火水源は、消火栓の損壊も想定し、1つの火災に対して30分の放水、転戦への対応も考慮し、0.4立方メートル/分×2口×30分で、24立方メートル程度の確保を求めた。

ソフト面での強化策としては、定期的な通報訓練、油火災にも対応できる消火訓練を通じ、初期消火体制の構築を図る。これに関連し、保安院は、実火訓練のできる場として、昭和シェル石油防災訓練所の実施する研修コースに触れ、同様の施設が全国に計5か所はあることを紹介した。

一方、自治体・国民等への情報についても、提供する対象、仕方など、地元の意見を整理した上で、今後の論点が示された。自治体側の意見を踏まえ、オフサイトセンターの活用も検討する方向だ。

一連の経緯説明のために出席した東京電力は、「原子力の火災はどんなに小さくても住民の受けるショックは大きい」と述べ、「火災ゼロ」の気構えで改善計画を着実に実施し、合わせてPDCAサイクルにより向上を図ることを強調した。情報発信では、放射能影響への不安、情報公開自体に対する不満を中心に、住民からの意見が数百件にも達していることをあげ、広報部門に留まらず全社レベルで今回の反省点の整理に当たっていることを述べた。


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