[原子力産業新聞] 2007年9月27日 第2397号 <4面>

原子力機構 深地層研での調査成果報告を受け 「研究開発の見せ方」を議論

日本原子力研究開発機構は18日、JAホール(東京・千代田区)で、「高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発報告会」を開催した(=写真)。同機構が岐阜・瑞浪超深地層研究所と北海道・幌延深地層研究所で進める処分技術研究の第1段階取りまとめに際し、その成果を発表するとともに、今後の進め方について、パネルディスカッションを通じ意見交換を行うもの。

研究報告では、石川博久・地層処分研究開発部門副部門長らが、両深地層研究所で地上からの調査を主として実施した処分技術研究第1段階の成果を披露した。同段階では、地層処分事業の概要調査段階での技術・知見・ノウハウを獲得する。瑞浪では結晶質岩、幌延では堆積岩を対象に調査研究が実施され、それぞれ05年度、04年度に第1段階を終了した。瑞浪では先月末現在、次段階に向け、2本の立坑が深度200mまで掘削完了、両立坑をつなぐ水平坑も掘削中となっている(今月10日に貫通した)。幌延については、冬季、観測機器のデータ回収・点検に雪上車を要すること、凍てついた河川の流量観測では、まず川面の積雪を掘り出さねばならないことなど厳寒地ならではの苦労話も語られた。

パネルディスカッションでは、国民への理解促進に関連し、主に「研究開発の見せ方」について意見が分かれた。科学ジャーナリストの中村浩美氏は、地層処分の必要性が国民に理解されていない一因として、「情報発信の戦略・戦術が欠けている」ことをあげ、一般人、自治体首長等、ターゲットを絞ったアプローチ、PR施設の活用などが必要と強調した。

地下研究施設の公開について、小島圭二・地圏空間研究所代表は、建設段階の水浸し状態などを目にするとかえって不安を招くとして、公開するタイミングを考慮すべきとしたほか、杤山修・東北大学多元物質科学研究所教授は、「地下300mを単なる数字ではなく実感してもらうよう、見せ方にも工夫が必要」と指摘した。これに対し、河田東海夫・原子力機構地層研究開発部門長は、「真面目に取り組んでいることを見てもらい、共感を得ることが大事」と、研究開発に携わる立場からの思いを述べた。コーディネーターを務めた西垣誠・岡山大学環境学研究科教授は、完成し実用に供している黒四ダムや青函トンネルと違い、「研究開発を行っている場」ということを見る人に理解してもらう必要を指摘した。


Copyright (C) 2007 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.