[原子力産業新聞] 2007年10月4日 第2398号 <1面> |
「規制制度の見直しを」 学会で根本的問題提起 時代に合った法体系求める日本原子力学会は秋の大会の9月28日、「原子力の法制度はどうあるべきか」と題するセッションを開催し、特に原子力発電の規制制度について、3人の専門家がそれぞれの立場から個人的見解として発表した。約60人が参加した。 座長を務めた下山俊次氏(日本原子力発電)は、「なぜ、いま法改正か。法制度と技術とのインターフェイスの問題を議論したい」とセッションのねらいを述べた。 まず西脇由弘氏(東大大学院工学系研究科国際専攻)が、東京大学が事務局となって発足した「原子力法制研究会」の概要について報告した。 同氏は、現在の規制体系が、設計中心の法体系や体制になっており、運転管理の時代を反映していない、と指摘した上で、いままで採られてきた法改正は、必要に迫られて行われてきているのが通例で、「全体の体系を理想的に変更することは考慮されづらい」とした。 同研究会では現在課題の整理中であり、この秋にも日本原子力学会に適切な検討会を新たに設けて、成果も公表していく見通しも明らかにした。 同氏は、原子力安全委員会のダブルチェックの有効性、安全協定に基づく地方自治体の役割、事業別規制により共通の制御系・分析設備などが二重規制とされる点、使用前検査の対象について機器単位では明確になっていないこと、事故・故障情報の公開性と非公開性――などについて検討が必要だとした。 電力会社の立場から、「原子力発電法制の課題」と題して報告した丸茂俊二氏(東電原子力設備管理部)は、設置許可と構造強度計算以外の工事計画認可の一本化の必要性を強調した。また、原子力安全委員会での二次審査で、ABWRへの委員からのコメント数(=表)を引き合いにだし、プラント特有のものは少なく、ABWR共通のコメントが多くを占めていることから、「原子炉の型式承認制度」の導入を求めた。 安全審査の基礎となる指針類は法的には「原子力安全委員会の『内規』」と指摘し、指針類の政省令化を要請、さらに「一次審査と二次審査の内容、判断基準が同一」であること、行政庁が一次審査の十分な経験を蓄積してきたことなどを挙げ、ダブルチェックの見直しを求めた。 「原子炉等規制法の問題点」と題して報告した田邉朋行氏(電力中央研究所)は、現在の原子炉等規制法が縦割りの「事業規制」であることから、異なる事業間で共有施設を設置することが難しいと指摘、また例えば、商社による天然ウランなどの輸入が認められない問題点などを挙げ、「物質規制」に移行すべきだと主張した。 法改正を行う場合の方法として、同氏は全面改正と部分的補強の各長短を挙げ、世界的には韓国を除く多くの国が全面改正を行っている、と紹介した。 下山座長が最後に、「学会でも今回の問題を提起したのは初めて。国民の法制度への信頼が何よりも重要だ。透明性と簡潔化、国際性が必要で、まず問題意識の共有を」と訴えた。 |