[原子力産業新聞] 2007年10月18日 第2400号 <3面>

TENEXジャパン S.プルジュニク代表取締役に聞く ロシア原子力産業は民営化の方向

ロシア政府が100%株式を保有するTENEXの日本法人、TENEXジャパン。単なる日本法人としてだけではなく、日ロ間をつなぐ太いパイプ役として、近年、その存在感を増している。

同社のS.プルジュニク代表取締役(=写真)に、ロシア原子力産業の展望を聞いた。(石井敬之記者)

――TENEXの事業内容は?

プルジュニク TENEXは、海外向けの核燃料販売を目的に1963年に設立された。事業分野は幅広く、販売以外にもウランの生産、濃縮サービスや転換サービス、使用済み燃料の中間貯蔵・再処理などを実施している。特にTENEXの濃縮能力はきわめて高く、濃縮サービス分野では、世界市場の28%シェアを占めている。

――TENEXジャパンは?

プルジュニク 3年前に発足した。今年6月からは、PWR燃料については日本の販売代理店を経由せずにTENEXジャパンが直接販売する形に切り替えた。TENEXの日本窓口としてだけでなく、ロシアの原子力産業界全体の日本窓口のようなものだと思ってもらいたい。

――日本でのこれまでの受注状況は?

プルジュニク TENEXは、日本の電力会社とはこれまで15年近くにわたってお付き合いしている。最近では腹を割った話が出来るようになってきた。日本の核燃料市場におけるTENEXのシェアは12〜13%に達している。今後もこの関係を維持・強化し、近い将来には30%シェアを目標としていきたい。

――アトムエネルゴプロム(AEP)発足の影響は?

プルジュニク TENEXはAEPの下で、ウラン生産・濃縮・転換・燃料加工・輸送・保管などウラン関連のすべてを担当することになる。燃料加工専業のTVELは、TENEXの傘下に入ることになった。

――AEPを巨大な国営企業誕生と警戒する向きもあるが?

プルジュニク まったくの誤解だ。AEPはロシアの原子力産業の民営化を企図した試みだ。現在ロシアの原子力関連各社は、政府が100%株式を保有しており、ロシア原子力庁の影響力もきわめて強い。AEPも同じく100%政府保有の持ち株会社であるが、AEP傘下の各社については、TENEXを含め外資の導入が認められている。つまり各社は、原子力庁からの制約を受けずに、フリーハンドで原子力産業を推進できるということだ。

――TENEXの最近の人事は、民営化へ向けた布石なのか?

プルジュニク その通りだ。V.スミルノフ総裁を始めとした原子力庁出身の役員たちが退任し、A.グリゴリエフ新総裁らTENEX生え抜きの人材が役員を占めるようになった。民営化へ向け、原子力庁の影響力を極力弱めたということだ。

――海外ウラン権益の拡大にも積極的なようだが、ウラン生産計画は?

プルジュニク 2006年実績のウラン生産量3,200トンUを、2020年までには1万5,000トンUまで拡大する計画だ。ただし確認されているウラン埋蔵量は2020年をピークに、以降は縮小傾向に転じると予測されており、国内外を問わず積極的にウラン探鉱を実施しているところだ。

――カザフスタンでは、日本がウラン権益を獲得したが。

プルジュニク 日本のカザフスタンでの権益獲得を、我々は歓迎している。中国やインドがカザフスタンの権益を押さえたところで、ロシアとしてはまったくビジネスにならない。ロシアがアンガルスクに国際ウラン濃縮センターを設立するのも、そのためだ。

――どういうことか?

プルジュニク 単純に地理的な問題だ。日本にとって、カザフスタンで生産したウランを濃縮する際に、わざわざ英仏に輸送するよりも、カザフスタンと日本の間に位置するシベリア南東部のアンガルスクへ輸送する方が合理的だろう。国際ウラン濃縮センターは、日本にとって魅力的なはずだ。

――アンガルスクの濃縮プラントの現状はどうなっているのか?

プルジュニク アンガルスクのプラントは非常に大きなものだ。現在、プラント全体を3パートに分け、それぞれ濃縮事業を実施するプロジェクトが進行中だ。第1パートでは、TENEXの濃縮事業を実施。第2パートでは、ロシアのアトムストロイエクスポルトとカザフスタンのカザトムプロムが共同でウラン濃縮事業を実施。第3パートでは、国際ウラン濃縮センターとして、各国からの委託により濃縮サービスを実施する。

――日本が濃縮サービスを委託するとしたら?

プルジュニク 第3パートで引き受けることになるだろう。ロシア側としてはかねてより日本側に、アンガルスクで濃縮し、非常用の燃料備蓄サイトもアンガルスクに置いてはどうかと呼びかけている。

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セルゲイ N.プルジュニク 1958年生まれの49歳。モスクワ上級技術学校出身のエンジニア。旧ソ連民間航空省上級技術者、アエロフロート・ロシア航空マネージャー(在東京)等を経て2003年よりTENEXアジア・アフリカ部門本部長。04年よりTENEXジャパン代表取締役を兼務。日本語も堪能な知日家だ。


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