[原子力産業新聞] 2007年10月26日 第2401号 <8面>

〈原文振最優秀理事長賞〉鹿児島県薩摩川内市立川内南中学校・1年 小田原 珠実 限りあるエネルギー資源と原子力の役割 ―人類の未来のために

母は現在42歳。今もあらゆることに挑戦する。その母は24年前、高校生の代表として中国を訪問した。そして、その時の印象を次のように記している。

「中国の人たちは一様に国民服を着て血色も悪く、実際の歳よりもだいぶ年老いて見えた」、「今にもこわれてしまいそうなレンガ造りの家にある電化製品は、唯一かさのない電球だけだった」と。

私は驚きを隠せなかった。母はさらに続ける。「この中国の人たちは驚くべき力を秘めている。近い将来必ず大きな発展をするだろう。この国の発展のために日本は惜しみない技術援助や技術移転をする必要がある。日中の間には悲しい過去があったが、必ず両国の間には深い信頼の絆が生まれるはずだ」とも。

悠久の歴史の中でひっそりと暮らす貧しい中国人の生活に触れ、エネルギーの必要性を実感したという内容の作文であった。

今年の春、私も家族と共に中国へ行った。目の前に広がる高層ビルの群れ。クラクションが鳴り響いている喧騒の都会。だから母の訪中記は信じられなかった。中国旅行が2回目となる母も「わぁー、変わったねー」と大きなため息をもらした。

日進月歩を続ける中国だが、めざましい発展と引き換えに、今多くの問題を抱えているようにも思えた。どこに行ってもにごっている水。ひどい所は悪臭すらしている。広がる空もどんよりとしている。私は地球温暖化のことをすぐに思い浮かべた。

地球温暖化は二酸化炭素が増えすぎて起こる現象だ。なぜ二酸化炭素が増えてきたのか。それは、私たちが不自由のない、快適で便利な生活ばかりを追い求めてきた結果だと思う。化石燃料を過度に消費してきた代償である。今、ようやく世界が、地球温暖化のもたらす深刻な事態に目を向け始めた。

人間は、失って初めてその大切さに気づくという。戦後の日本もまた「経済成長」ばかりに躍起となり、祖先の人たちが敬ってきた水や空気を汚した結果、貴重なものを失った過去がある。この地球をこれ以上汚染すると人類に未来はない。

上海での通訳の周さんは「反日問題は、多くの日本人の心を痛めました。しかし反日感情を持っているのはごく一部の人たちで、多くの中国人は日本の優秀な科学技術と惜しみない技術移転に尊敬と感謝の念を持っているのです。また、この汚れた水と空気を美しいものにするためには、どうしても日本の科学の力が必要です」と話された。

わが家は4年前に建てられた。一見普通に見える屋根瓦は太陽光発電の役割を持ち合わせている。環境にやさしいといわれる太陽光発電は、天候によって左右されるという欠点と、そのアイテムを作る時にばく大なエネルギーが消費されているという現実がある。そう考えれば、安定的に供給でき、二酸化炭素を排出しない原子力発電が、私たちには必要なエネルギーではないかとの結論にたどり着く。

しかし、つい数か月前、地震による柏崎刈羽原子力発電所事故のニュースが新聞やテレビをにぎわせた。柏崎と同じように原子力発電所を有する私たちの町も他人事では済まされないと思った。柏崎原電で問題なのは、その事故を隠すという行為ではないだろうか。今回発表が遅れたことで、問題が雪だるま式に大きくなったように思う。事故を隠すことは何の利益も生み出さない。事態を悪化させ、国民の不安をあおるだけである。ありのままを伝え、その解決方法を国民全体で考えていけばいいのではないだろうか。

母は中国から帰ってきて、こう言った。

「本当の科学技術とは、自国の発展を考えるものではなく、世界の人々を幸福にする技術でなければならない」と。

私は日本人の一人として、日本の原子力発電技術が世界の人々の未来に幸福をもたらすと信じている。


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