[原子力産業新聞] 2007年11月1日 第2402号 <1面>

浜岡訴訟地裁判決 運転差し止め請求を棄却 中部電力の主張 全面認定

中部電力・浜岡原子力発電所1〜4号機に対し、市民団体が運転差し止めを求めた本案訴訟と仮処分事件の判決が10月26日に静岡地裁であり、宮岡章裁判長は「耐震安全性は確保されている」とし、原告側の請求を棄却、却下した。中部電力の三田敏雄社長は同日会見(=写真、中部電力提供)し、「引き続き安全確保を最優先に安定運転に努める」とした。原告側は、即日控訴および即時抗告し、今後は東京高裁で裁判が行われることになる。

同裁判は運転差し止めの仮処分申立てが02年4月、本案訴訟が03年7月。将来発生する地震により重大事故が発生する蓋然性があり、重大な被害を受ける危険があるというもの。06年3月の金沢地裁による北陸電力志賀原子力発電所2号機の運転差し止め判決(現在控訴審係争中)、中越沖地震の発生とともに、静岡地裁が「原子力の日」を判決日としたこともあり、その判断が注目された。

裁判の主な争点は、@想定東海地震発生時に同社の想定を上回る地震動が発生する可能性があるかA応力腐食割れなどの経年変化事象によって機器の耐震性が低下しているか――など。

宮岡裁判長は、同発電所が審査基準等に適合し、旧審査指針も合理的なものと認めた上で、「基準地震動S1、S2の策定方法は妥当であり、想定東海地震だけではなく、想定東海地震と東南海地震・南海地震が連動した場合の地震動に対しても耐震安全性は確保されていると認められる。敷地内に存在する断層系は既に固結しており、安全性に影響を及ぼす地盤の変状は考えられない」とした。また、経年劣化事象についても「点検・検査によって応力腐食割れなどの発生を補足できる体制が整っており、耐震安全性に影響はない」との判断を示した。

三田社長は会見で、「浜岡原子力発電所は耐震性を含め安全性を十分に確保していると確信している。今後も安心して頂ける発電所の運営に努める」などと述べるとともに、地元自治体などの理解・協力に感謝の意を表した。また、約1,000ガルの目標地震動を自主的に設定、裕度向上のための工事を進めており、3〜5号機の工事をほぼ完了し、4号機のプルサーマル計画も2010年度からの実施を目指し、引続き必要な準備を進めるとした。

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電気事業連合会の勝俣恒久会長は同日、「今回の判決および決定は、中部電力がこれまで主張されたことが認められたものと考えており、喜ばしいこと。今後とも私ども電気事業者は原子力発電の安全性や必要性について広く国民の皆様に理解を深めて頂くよう、一層努める」とのコメントを発表した。

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原子力安全委員会と原子力安全・保安院は同日、民事訴訟でもあり判決の内容についてのコメントは差し控えたいとした上で、新審査指針を踏まえ現在各事業者などが進めているバックチェックの審査を厳格に適切に進める、などとする談話を発表した。

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日本原子力産業協会の服部拓也理事長は同日、「浜岡原子力発電所はすでに十分な耐震性を持ち、さらなる耐震強化の検討と工事も行っており、耐震安全性は十分確保されている。世界の安定したエネルギー供給を担い、地球環境を保全しながら持続可能な発展を実現する原子力発電は、益々その必要性を高めている。当協会は社会の理解を得ながら原子力利用を進める努力を続けていく所存である」などとするコメントを発表した。


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