[原子力産業新聞] 2007年11月29日 第2406号 <4面> |
近藤原子力委員長が講演 「新技術の市場化」を強調原子力委員会のトップダウンで行われる「クロスオーバー研究」の合同シンポジウムが12日、東京大学で開催され、現在進められている「低線量域放射線に特有な生体反応の多面的解析」と「照射・高線量領域の材料挙動制御のための新しいエンジニアリング」の各研究成果を報告するとともに、今後の研究開発のあり方について、討論した。 冒頭の特別講演で、近藤駿介原子力委員長は、第3期科学技術基本計画のうたう6大目標「飛躍知の発見・発明」、「科学技術の限界突破」、「環境と経済の両立」、「イノベーター日本」、「生涯はつらつ生活」、「安全が誇りとなる国」の、それぞれに相当する原子力研究開発を掲げた上、学術の進歩、新サービス創出につながるよう、社会がこれらに投資していく意義を述べた。また、新技術の市場化に際しては、適切な環境整備がなされなければ、「宝の持ち腐れ」となると指摘し、競争を仕掛ける「コンペ」、部分的な改良でユーザーとのやりとりを繰り返す「スパイラル開発」、仮想により失敗候補を削り落とす「シミュレーション」を通じた、「システムインテグレーション技術」の機能が不可欠なことを強調した。特に、原子力開発では、設計、建設、運転、廃止を通して、「シミュレーション」能力の整備が、今後の原子炉延命の実証でも「非常に重要」となると述べた。 原子力委員会の評価WGで主査を務める岩田修一・東大新領域創成科学研究科教授は、社会全体に役立つ知的財産を創り上げていくコミュニティとして、学術会議、教育機関、独立行政法人、メディア、産業界、博物館、国際機関、NPOが一体となった「原子力コモンズ」の設計を提唱した。 テーマ別研究報告では、マウスを用いた低線量放射線リスク評価、シミュレーション実験による原子燃料セラミックス材料の高燃焼時の組織変化などが紹介された。 |