[原子力産業新聞] 2007年12月6日 第2407号 <2面>

電気新聞フォーラム 原子力報道で議論 「量的評価のできる記者」など

電気新聞主催のフォーラム「原子力とメディア報道」が11月27日、都内で開催(=写真)され、欧米の原子力報道の現状を報告するとともに、ジャーナリストらがパネル討論を行い、事業者とメディアとのコミュニケーションのあり方などを議論した。

冒頭、挨拶に立った勝俣恒久・電気事業連合会会長は、中越沖地震に伴う柏崎刈羽原子力発電所の影響に関する広報を振り返り、報道側の「スピードと画像に対応し切れなかった」ことを第1の反省点に挙げた上で、多種多様に台頭するメディアの中でも、特に新聞に対し、「社会の木鐸」として、世の人々に的確に物事を伝えることを期待した。

海外の原子力報道について、在独ジャーナリストの熊谷徹氏が、去る6月のドイツ・クリュンメル原子力発電所変圧器火災を例に、市民からの問い合わせに対する48時間以内の返答など、事業者の積極的な対話キャンペーンが図られたことを挙げ、電力間競争による顧客喪失への歯止めからも、「守りの広報から攻めの広報へ」、「情報の危機管理を」を基本姿勢に据えたドイツ電力会社の努力を紹介した。

続いて、米国の緊急時コミュニケーション体制の現地調査について、円浄加奈子・電気新聞編集委員が報告した。TMI事故の教訓から、「第1報はマスコミではなく事業者から」、「簡潔な『トーキングポイント』によるワンボイス発信」の方針のもと、誤情報による混乱を防ぎ、公衆の不安解消を第1とする米国での原子力広報の印象を述べた。非常事態発生時の情報発信拠点として、電力、州政府の運営する「共同情報センター」が機能、NRCは「緊急時コミュニケーション計画」に基づく各種情報の分析・提供を、NEIは「情報ターミナル機能」として事態発生から30分以内の情報収集を図るなど、手順・役割の明確化した米国の広報体制を円浄委員は説明した。

作家・神津カンナ氏の進行によるパネル討論ではまず、清水正孝・東京電力副社長が、今回の中越沖地震による影響を教訓に、海外のメディア、電力とも連携を強化していく考えなどを述べた。

テレビ報道について、作家の幸田真音氏は、短時間で伝えねばならぬ制約を、NHK記者の経歴を持つ熊谷氏は、甚大な被害状況が繰り返し流されることを挙げ、両氏とも映像のインパクトの強さを指摘した。加えて、熊谷氏は米支局勤務の経験から、会見だけではなく、記者に対する「バックグランドブリーフ」が専門性の強い分野では重要としたほか、福田悟・東奥日報政経部次長は、六ヶ所再処理試験に先立ち日本原燃がまとめた「トラブル事例集」の有用性を挙げるなど、事業者とメディア側との密なコミュニケーションの必要を強調した。

また、竹内敬二・朝日新聞編集委員は、放射能漏れの報道に関連して、「量的評価のできる記者」が育まれる必要を求めたのに対し、科学ジャーナリストの中村政雄氏は、昨今の情報細分化から、「専門的分野を広い視野で記事を書くのは難しい」と述べた。


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