[原子力産業新聞] 2007年12月6日 第2407号 <3面>

加アルバータ州での新規原子力計画 大手電力ブルースパワーが買収

カナダ・オンタリオ州を本拠地とするブルース・パワー社は11月29日、エナジー・アルバータ社(EAC)の新規原子力発電所建設プロジェクトを買収する方針を正式に発表した。アルバータ州への原子力発電導入を掲げて発足した民間企業EACのプロジェクトは、実現に向けて大きく前進した。

カナダ原子力公社(AECL)と協力協定を締結しているEACは、アルバータ州でのCANDU炉の独占利用権を保持している。ブルース・パワー社とEACは同利用権を、新たに発足するブルース・パワー・アルバータ社へ譲渡することで基本合意。EACが進めてきたアルバータ州での新規建設プロジェクトは、ブルース・パワー・アルバータ社が継続することになる。EACのW.ヘニューセット社長は、ブルース・パワー・アルバータ社の顧問に就任する。

またブルース・パワー・アルバータ社は、ピーク時以外の余剰電力を利用した水素製造も視野に入れており、カナダ水素協会(CHA)と協力し可能性を検討する方針だ。水素製造が実現すれば、電力供給とオイルサンド回収の2つを目的として計画されたEACのプロジェクトは、新たに電力供給と水素製造の2つを目的とするプロジェクトに生まれ変わる。

EACは2005年10月に、原子力によるアルバータ州への電力供給とオイルサンド回収の事業化を掲げて設立された民間企業で、昨年8月にAECLと協力関係を構築。今年8月、アルバータ州ピースリバーを対象としたサイト準備認可(SPL)を、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に申請した。AECL製のACR1000型炉(出力120万kW級)2基を2012年に着工し、2017年にも運開させる計画だ。建設コストは62億加ドル(58億ドル)と見積もられている。

カナダ唯一の民間原子力発電会社であるブルース・パワー社は、ブルースA3、4号機(CANDU、各80万5,000kW)、ブルースB1〜4号機(CANDU、各84万kW)の計6基を運転しており、オンタリオ州の電力の20%以上を供給している。しかしうち5基は2015〜2020年頃に大規模な改造もしくはリプレースが必要になると見込まれている。そのため同社は2006年8月、ブルース・サイトを対象としたSPLをCNSCに申請している。

ブルース・パワー社のD.ホーソーン社長兼CEOは、「新規建設に一番重要なのは地元自治体の意向」と指摘。これまでEACが培ってきた地元自治体との友好関係を引き続き強化していくとした。

ホーソーンCEOは、地元住民の間に反対運動があることにも触れ、「アルバータ州にこれまで原子力発電所がなかったのだから、当然の反応だ。まだ原子力発電に関する十分な知識も普及していない」との認識を示した。そして今後3年かけて、「環境影響評価と並行してPA活動を実施し、地元住民との対話を重ねていく」と強調した。


Copyright (C) 2007 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.