[原子力産業新聞] 2008年1月7日 第2410号 <11面>

外部電源喪失にも適応 津波の引き波、20分間は耐えられる

今年7月の中越沖地震でも柏崎刈羽原子力発電所は、十分に「止める」「冷やす」「閉じ込める」の安全上の機能を発揮した。制御棒全数のスムーズな挿入、非常用ディーゼル発電機もいつでも起動できる状態だったが、外部電源(送電線網)が2ルート・4回線のうち2ルート各1回線(2回線停止)が健全だったため利用することもなく、原子炉の冷却水を大気圧・100度C以下の「冷温停止」に、遅くとも21時間以内にもっていくことができている。

浜岡原子力発電所の場合、送電鉄塔の崩壊などによる外部電源の喪失があっても、柏崎刈羽原子力発電所と同様に非常用ディーゼル発電機(1、2号機に各2台、3〜5号機に各3台)の電源によって炉心の冷却が可能だ。

さらにその非常用ディーゼル発電機が万一利用できなくなった場合でも、自らの炉心崩壊熱で発生する蒸気を使って小型タービンを駆動し、直接非常用のポンプを回す「原子炉隔離冷却系」で、炉心冷却ができる設計になっている。

津波対策

地震による津波対策も考えられており、浜岡の場合、1854年の安政東海地震による津波について、水位評価を実施するため、痕跡高(こんせきだか)などの文献調査に加えて数値解析を行い、陸上への海水遡上だけでなく、引き波による水位低下についても、津波の挙動を詳細に評価している。

その結果では、敷地における最高水位は、満潮位時に津波がやってきた場合にも、海水の遡上はプラス6.0m程度と想定した。浜岡原子力発電所の沿岸部の海岸砂丘の高さは低い所でも10mであり、敷地の高さは6m〜8mであって、津波遡上の対策は十分としている。ちなみに安全上重要な機器を収容している原子炉建屋などの出入り口の扉は防水構造としている。

一方、引き波による海水位低下に対しては、沖合い約600m、水深約10m地点に取水塔が設置されており、海底下の取水トンネルを通じて取水槽に海水を導いている。

数値解析によると、水位低下(地盤の隆起も1.4m考慮)によって海水は干潮時には最大マイナス8.8mまで低下し、この間、取水口の下端レベル(マイナス6m)を4分間程度下回るとの結果がでており、この間、一時的に海水が取水できなくなる。

対策として、取水槽には原子炉機器冷却系に必要な量の海水が20分程度以上確保されており、その間に取水塔位置の海水水位は回復するので、引き波に対しても原子力発電所の安全性は十分確保されることになる。

記事の結論

このように見てくると、巨大地震に立ち向かう耐震裕度向上工事とは、結局のところ、目に見えて大きく改造の様子が分かる排気筒の改造を除くと、地味で目立たない何千何百という工事の積み重ねで達成されるものであることがよく分かる。

結果的に、巨大地震に対しても、原子炉、格納容器、原子炉建屋、制御棒駆動系などの安全上重要な設備は、当初の設計時から十分な余裕が確保されていることを、改めて浮き彫りにさせた。


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