[原子力産業新聞] 2008年1月7日 第2410号 <3面>

米国 インディアンポイント原子力発電所 NY州知事が閉鎖要求

ニューヨーク州の南東部ウェストチェスター郡に立地する、インディアンポイント原子力発電所(=写真)。マンハッタンからおよそ40キロメートルの距離にある同発電所では、2号機と3号機が運転中で、ニューヨーク州全体の電力需要の1割強を供給している。しかし同州のE.スピッツァー知事(民主党)が最近、同発電所の閉鎖を求める姿勢をより強化したことから、産業界に懸念が広がっている。

エンタジー社は今年4月、それぞれ2013年、2015年に満了する両機の40年間の運転認可を、さらに20年間延長するよう原子力規制委員会(NRC)へ申請。現在NRCが審査中である。しかしスピッツァー知事は先月、同州のA.クオモ司法長官(民主党)と連名で、「両機の運転認可更新を認可するべきではない」とする要望書をNRCへ提出。両機は老朽化しており、テロ攻撃や自然災害に対して脆弱だとし、安全上の理由から現行の運転認可期限で閉鎖すべきと主張。「大都市圏であるニューヨーク州に原子力発電所が存在することを許すわけにはいかない」と強調した。

これに対し米原子力エネルギー協会(NEI)は、「両機の運転認可延長については、安全性はもとよりあらゆる面からNRCが約2年をかけて慎重に審査する。NRCは審査するだけでなく、両機に対して年間最低でも2,200時間を費やして監視業務も実施している」と指摘。安全性を判断するのはNRCであって州政府ではない、と反論している。

全米製造業者協会(NAM)も、「ニューヨーク州の電力の一部がニュージャージー州の電力会社から融通されている現状を考慮すると、発電所の規制や閉鎖は、事業者や州民の電力需要を見て見ぬふりをするのと同じことだ」と指摘。「インディアンポイント発電所は、ニューヨーク州の電力網に不可欠。州政府は、発電設備容量の減少を図り、コストの上昇を招こうとしている」と懸念を示している。

同発電所は、直接の経済効果をもたらすだけでなく、州の電力需要の約11%を供給している。同発電所が閉鎖された場合、ニューヨーク州南部地域では卸電力価格が13〜25%上昇するとの試算もある。

またスピッツァー知事は、同発電所の代替電源について、明確な計画を示していない。計200万kWの出力で90%以上の設備利用率を誇る同発電所の代替電源として、風力や太陽光はまず役に立たないだろう。

環境にやさしい選択肢は天然ガス火力ということになるが、その場合、年間の燃料費とインディアンポイント発電所閉鎖にともなう資本回収コストとして、ニューヨーク州民の負担額は15億ドルを超えると見積もられている。費用の増加はニューヨーク州民の負担にとどまらない。天然ガスの需要増加は、米国北東部全域に価格高騰を招く。

一方、コスト的に現実的な選択肢である石炭火力で代替した場合、年間1,400万トン相当のCOが新たに排出される。これは路上に270万台の自動車が増加することに匹敵するという。

スピッツァー知事は自らを環境主義者と称しているが、地球温暖化防止やエネルギー・セキュリティの観点から、米国で最も必要とされていることは、原子力発電所の増設や既存炉の確実な運転であろう。政治的なパフォーマンスから原子力発電所を閉鎖している場合ではない。

エンタジー社は2001年に、インディアンポイント原子力発電所を、コンソリデーテッド・エジソン社とニューヨーク電力公社から購入した。同年に同時多発テロが発生し、不安を煽る原子力反対派の格好の材料となり、同発電所は一躍注目の的となった。

さらに同発電所は、2005年エネルギー政策法で緊急時通報システムのサイレンを設置する発電所に指定され、その後、米連邦緊急管理庁(FEMA)などからサイレン音量の不具合を指摘されたことから、反対派の餌食となっている。


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