[原子力産業新聞] 2008年1月7日 第2410号 <4面>

年頭所感 甘利 明 経済産業大臣  総合的なエネ政策遂行

平成20年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

昨年発足した福田内閣において引き続き経済産業大臣を拝命いたしました。ライフワークである経済産業行政を引き続き担う喜びを噛みしめる間もなく、早速就任の翌日から中国に出張するなど、全力で走り続けています。

昨年は、成長力の強化、地域・中小企業の底上げのため、いわゆる地域振興二法を制定し、地域への企業立地や、特産品・観光などの地方独自の資源を活用した取組を支援する仕組みを作りました。また、国民の安全・安心を確保するため、消費生活用製品安全法と電気用品安全法を改正し経年劣化による製品事故を未然に防止する措置等を講じたほか、新潟県中越沖地震を教訓に、原子力発電所における自衛消防体制、情報連絡体制の強化、耐震安全性の見直しなどに全力で取り組みました。

また、経済のフロンティアを拡げアジアの成長を我が国の成長につなげるとの対外経済戦略に基づき、日アセアン包括的経済連携交渉の妥結を果たすとともに、エネルギー・環境制約を克服するため、中東・中央アジア・アフリカへ出張し、石油、ウラン、レアメタル確保を狙った資源外交に積極的に取り組みました。世界規模で省エネを進めるため、途上国も含め省エネ目標・行動計画を策定するという国際合意を取り付けました。

しかし、国内外にはなお多くの課題が山積しています。経済産業政策についての私の知識と経験を総動員し、国民の皆様、特に地域・中小企業の皆様の声に耳を傾けながら、本年も引き続き全力で努力します。

まず第1に、福田内閣としての「新たな成長戦略」の具体策づくりに取り組んでいきます。巨額の財政赤字を抱える我が国が、縮小均衡に陥らず、希望ある未来に向けて様々な政策を実施するための原資となる「富」を生み出す取組です。

私は、我が国が目指すべき「国のすがた」を「世界とアジアとの連繋を図りながら、アジアの発展に貢献し、アジアとともに成長する日本」と考えています。それを実現するポイントは、高度で調和のとれた市場を創出する「アジア経済・環境共同体構想」及び国内での知恵・情報の循環・共有における「つながり力の強化」、技術・文化など日本がもつ「強みの突出」、環境や安全・安心など新しい「需要の創出」の3つです。

このような「新たな成長戦略」の策定と並行して、地域・中小企業、エネルギー・環境政策、国民の安全・安心、対外通商政策といったあらゆる角度からの取組も進めます。

特に、本年は、地球温暖化対策の鍵となる年です。京都議定書の第1約束期間を迎えるに当たり、温室効果ガスの排出量を6%削減するという京都議定書の削減目標を確実に達成するため、本年3月に京都議定書目標達成計画を改定します。国際的には、北海道洞爺湖サミットやG8エネルギー大臣会合などにおいて、我が国がリーダーシップを発揮すべく取組を進めます。2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を半減させるとの長期目標を達成するため、二酸化炭素を排出しない石炭火力発電や、超高効率の太陽電池などの革新的技術開発を進めます。また、京都議定書に続く新たな枠組みを、すべての主要排出国が参加する実効あるものとするよう、国際的な議論をリードしていきます。

資源の少ない我が国として、エネルギーの安定供給確保は国民の生活に直結する重大な問題であり、積極的な取組が欠かせません。温暖化問題や原油価格高騰への対応のため、省エネ対策を一層推進します。特に、業務・家庭部門などの省エネを推進するため、省エネ法の改正を行うなど規制と支援の両面から対策の拡充・強化を図ります。国民の皆様には更なる省エネへの御協力をお願い申し上げます。加えて、安全の確保と地元の理解を大前提に、六ヶ所再処理工場の本格操業を控えた核燃料サイクルを含む原子力の推進、新エネルギーの導入拡大、更には、貿易保険や経済・産業協力などを戦略的に活用した資源国との総合的な関係強化など、総合的なエネルギー政策を遂行します。

また、対外政策についても、WTOドーハ・ラウンドにおいて多角的自由貿易体制の維持・強化及び我が国企業のグローバルな活動の推進のため早期妥結に至るよう積極的に取り組んでいきます。アセアン、日中韓、インド、豪州及びニュージーランドの16カ国を対象とした東アジア包括的経済連携構想の実現に向けた取組を推進し、東アジア経済統合の深化に向け努力します。米国・EUを含めた大市場国・投資先国などとのEPAについても、将来の課題として検討し、可能な国・地域から準備を進めます。こうした海外との「つながり」の強化により、アジア、世界の成長との一体化を目指します。

年頭に当たり、私の決意を申し上げ、皆様の一層の御理解と御支援を賜りますようお願い申し上げます。


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