新春特別座談会 洞爺湖G8サミットへの道標 ――「原子力と向き合う」 原子力発電グローバル化 新時代の幕開け 世界同時発展を可能に 温暖化防止・エネルギー安保を両立
官民一体で「安全」と「安心」を供給 「原子力ルネサンス」の支えは日本
司会 それでは佃社長、原子力プラント建設、技術開発も今やメーカーが主役の時代を迎えているが、原子力事業に社運をかけるような形で国際産業再編をリードされ、また、フランスのアレバ社とも戦略的に提携を組み約1年が経過した。この間の思い、また今後の巨大な原子力プラント市場でどう勝ち抜いていくのか、総合的にお話しください。
佃 今、甘利大臣からのお話のように、原子力のグローバル市場で、例えば、仏米ロに対抗して、日本が官民一体となって世界市場に打って出るというスタンスではなく、世界中でコンセンサスが得られるような、「安全・安心」を一般の方々に提供できるよう皆が協力していくことが、今から大事なことだと思っている。
例えばGNEPでは、政府は政策として積極的に参加していくという方針をいち早く打ち出された。ウランは今のままでは八十数年しか持たない、そうすると、次のステップに早く入り込まなければいけない。それはFBRだ。すると、FBRを使うためにはプルトニウムが主体になるので、核不拡散という観点から世界中で一層きちんと管理しなければならず、これを大前提に考えなければいけない。そのためには、世界中が一緒になって、どうこれを処理し、管理していくのか、さらに技術をどうあらゆる国に提供していくのか。こうした点を考えていく上で日本の政策は当を得たものであるし、メーカーとしても全面的に賛同している。三菱重工は今、アレバ社と連携、協力しているが、これは、世界の協力の枠組みの1つとしてメーカーとしても取り組んでいるということである。
その上で、日本のメーカーの強みは何かといえば、先ほどからお話が出ているように、“空白の30年間”の中で、きちんと国の政策および電力会社の施策として、原子力発電所の建設が続けられてきた賜物としての「ものづくりの力」である。当社が米国のマーケットでも支持され、いち早く米国本土でプラント受注することができた要因だ。ずっと蓄え続けてきた「ものづくりの力」を、原子力への信頼、安心を得るための手段として世界中でお使いいただきたい。そういう意味で、私は世界のマーケットで日本が評価されていると考えており、また、その信頼に十分に応えるように、これからも努力していきたい。
司会 では岡ア理事長、日本がこれから原子力の平和利用で世界の安全確保に貢献し、イニシアチブをとっていくという意味では、新しい革新的技術開発で先行し、「国際標準」を勝ち取っていくことが一番大事なポイントかと思いますが、いかがですか。
岡ア これまでもご指摘があったように、「原子力立国計画」によってぶれない、しっかりした原子力政策を打ち立てていただいたこと、そして、ここにご出席の佃社長の三菱重工を初めとした日本の原子力メーカー3社がグローバル・パートナーシップを組んで、これから世界の原子力発電の安定した発展に積極的に貢献されようという、こういう時代というのは、最初に甘利大臣がお触れになったとおり、日本のこれまでの経験や技術、あるいは、ものづくりを生かした産業力というものを世界の原子力発展に役立てていこうという、まさに「原子力ルネサンス」を日本が支えていくという、たいへん大事な時期を迎えているということだろうと私は思う。
ただし、将来も安定して日本がこの技術力を維持していくためには、先進的な原子力開発の技術力を獲得していかなくてはならないということが大事な視点であろう。実は、われわれ研究開発に携わる者としても、決して研究機関だけがこの研究開発を成し遂げられるものではない。ましてや、研究開発成果が確実に実証から実用段階に向かう、特に原子力のような巨大なシステム技術を実用化するためには、メーカーの皆さんの力なくしては決して実現できるものではない。したがって、FBRの技術開発、あるいは核融合の技術開発を含めて、将来の先端的な技術開発についても、メーカーの皆さんが積極的な役割を担っていく、あるいは責任を果たしていただくことがたいへん大事である、私はこう思っている。
おかげで、このFBRの技術開発で中核メーカーとなっていただいた三菱重工が、米国のGNEP計画にいち早く提案をして、それが今、採用されようとしているという、たいへんなご努力をいただいているわけで、こういった動きが最初に申し上げた、世界のこれからの原子力発電社会にとって、日本のメーカーの皆さんが大きな力を発揮し、そして世界の原子力開発をリードする、そういう役割を担っていただけるのだろうと思っている。
また、FBR技術開発の中で触れておかなければならないのは、先ほど日米仏の3か国の協力が大事だと申し上げたが、実は、あまり報道されていないものの、この分野でもロシア、あるいはインド、中国といった国々もたいへん積極的にこのFBR開発に取り組んでいて、場合によっては日本を追い越すかもしれない。こういう状況の中で、将来の新たな原子炉システムの開発にとって、日米仏というこの3か国がしっかりとしたリーダーシップをとっていくことが、将来の安定した原子力にとってたいへん大事な役割を担うのだろうと思う。その中でも、メーカーの皆さんにこの分野において積極的に貢献していただくことがたいへん大事だということを、一言追加させていただきたい。
司会 その国際共同開発プロジェクトの中での研究開発協力と同時に、日本独自といいますか、協調しながらも負けないように抜きん出るという、この兼ね合いというか、枠組みも必要ではありませんか。
岡ア これは、国際競争と協調・協力というものをどのように日本のこれからの戦略に生かしていくかというのは、われわれにとってもたいへん大事な視点だろうと思っている。私は、できれば今年内に、日米仏3か国の中で具体的な共同研究開発計画をぜひ打ち立てたいと考えている。この原子力先進3か国で協力して取り組むと同時に、将来にわたり日本のリーダーシップ、競争力をいかに構築していくかを考えていかなくてはならないという、難しい技術開発戦略にこれから取り組んでいかなくてはならない。これはもう関係する皆さん方とよく協議をしながら、日本として間違いのない戦略を打ち立てていく中で、今のご質問のように、将来の国際協力の中で国際競争に打ち勝っていくという視点を忘れてはならない、こう思っている。
司会 よく分かりました。それでは勝俣会長、世界が地球環境を守りながら、原子力平和利用で共に発展していくという“原子力発電グローバル化”新時代を迎える中、何よりも大事なことは、今日の皆さまのお話にもあったように、原子力発電所新規建設の継続的実績、経験、ノウハウ、人材、技術開発力等いずれの面でも今、世界の最先端に立つ日本が、まず自らの足元をしっかり固め、日本の中で信頼を得て、原子力への誇りと自信を持ち、核燃料サイクルを含む自己完結型エネルギーとして手中に収める手本を世界に示していくことではないかと思われます。一言コメントいただけませんか。
勝俣 2002年の東京電力による不祥事から始まり、トラブル、地震等いろいろな事象が重なり、国民の皆さまにもたいへんご心配をおかけしております。私どもでできることは、冒頭にも申し上げたように、とにもかくにも「品質管理の徹底」、これに尽きるかと思っている。その上で原子力発電所立地地域とのコミュニケーション、情報公開を含め透明性をきちんと確保していくことが肝心だと思う。
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