[原子力産業新聞] 2008年1月31日 第2414号 <1面>

原子力委ビジョン懇 報告書案で6つの重点策 世界的な原子力の加速を

原子力委員会の「地球環境保全・エネルギー安定供給のための原子力のビジョンを考える懇談会」(座長=山本良一・東大生産技術研究所教授)は29日、第6回会合を開催、報告書案をほぼ取りまとめた。

地球温暖化を防止するためには再生可能エネルギーの最大限の利用などとともに、世界的に原子力利用を加速する必要があると強調した上で、原子力拡大に向けた国際的枠組みの構築をはじめ6項目の重点取組みを打出した。近くパブコメに付し、3月11日の次会合で最終報告書とする。

報告書案はまず、現在世界で計画・構想されている約350基の原子力発電所の新設により、世界の原子力は7億kW規模となり、二酸化炭素排出量を7〜16%削減できるなど、原子力の役割の大きさを提起。

その上で、世界的な利用拡大に向けた取組みとして、@原子力が必要との共通認識の形成と拡大に向けた国際枠組みの構築A拡大の前提となる核不拡散、安全及び核セキュリティ確保のための国際取組みの充実B各国の利用推進のための基盤整備への積極的協力C世界的拡大に資する研究開発の強化――の4項目に重点的に取組むとした。

国際枠組みでは原子力をCDM(クリーン開発メカニズム)の対象に組込むとともに、ポスト京都議定書において有効な温暖化対策と位置付けるべきとし、各国の基盤整備では協力の前提となる二国間原子力協力協定などを整備するとした。

2項目は国内対策で、政策上の課題への取組み、国民との相互理解活動の強化を挙げた。

政策課題では耐震安全性の確認を第一に自然災害に関するリスク管理の強化、高レベル放射性廃棄物処分推進の格段の充実、科学的な安全規制システムに基づく定格出力向上や設備利用率向上の実現などに取組む。理解活動では透明性と公開性の一層の改善、教育や国民への情報発信の充実、各層との対話の機会の増大などを挙げた。

委員からは、「省エネや再生可能エネルギーの大幅な利用拡大などの方策も同時に最大限進めるものの、地球規模で原子力利用が進まない場合、2050年頃の二酸化炭素濃度半減が困難な点をより分かりやすく説明すべき」、「温暖化対策の緊急性を強調すべき」などの意見が出された。


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