[原子力産業新聞] 2008年1月31日 第2414号 <3面>

欧州 2020年の数値目標設定 排出削減と再生可能エネのシェア引き上げ

欧州委員会は23日、気候変動対策および再生可能エネルギーの利用促進に向けた広範な包括的提案を採択した。同提案は、欧州連合(EU)が2020年までに、@温室効果ガスの排出を1990年比で20%以上削減するA最終エネルギー需要に占める再生可能エネルギーのシェアを20%に引き上げる――等を盛り込み、EU加盟各国毎に法的拘束力のある数値目標を設定した。

特に欧州委員会は、EUの排出権取引制度(ETS)の強化・拡大を提案。現在はCOだけが対象とされているETSを、2013年をメドに、CO以外の温室効果ガスにも拡大し、すべての主要工業排出源が対象となるよう強化するとした。そして取引される排出権の割り当て枠を年々減らし、最終的にはETS対象となる温室効果ガス排出量を2005年比21%減とすることを目指している。

EUの温室効果ガス排出量の大半を占める電力部門は、2013年から入札方式へ移行。航空部門や他の産業部門も、段階的に入札方式へ移行させる。これらは公開入札で、EU内の事業者であればどの加盟国でも排出権を購入できるようになる。

ETSからの収益は加盟各国に還元され、再生可能エネルギー、COの回収・貯留(CCS)などの研究開発に支給される。ETSによる収益について欧州委員会は、「2020年までには年間500億ユーロに達する可能性もある」としている。

一方欧州委員会は、現在8.5%にすぎない再生可能エネルギーのシェアを、2020年までに20%に引き上げることを目指し、EU加盟各国毎に数値目標を設定した。ただしEU全体で20%の目標を達成する限り、加盟国は自国内での再生可能エネルギー開発にこだわる必要はないとされている。つまりEU加盟国全体で最も効率的な再生可能エネルギー技術に投資を集中出来ることになり、目標達成に必要なコストを18億ユーロ削減することが可能だという。

欧州委員会は昨年1月、EU共通のエネルギー政策案を発表。EUは京都議定書では、2012年までに1990年比8%削減と設定されているが、EU加盟国全体の温室効果ガス排出量を、2020年までに1990年比20%削減すると明記した温暖化対策を打ち出した。

欧州理事会(EU首脳会議)は同3月、同エネルギー政策案を承認し、欧州委員会に対して目標達成に向けた具体策を提示するよう指示していた。今回発表された包括的提案は、欧州理事会に対する回答と位置づけられている。


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