[原子力産業新聞] 2008年2月21日 第2417号 <3面>

特集V 科学者への信頼向上 ジェラルド・ウズニアン部長に聞く

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は処分事業の実施主体として、ビュール・サイトで粘土質岩を対象とした地下研究所の建設および研究を進めている。前回のC.ビロー議員のインタビューに続き、ANDRAのG.ウズニアン国際部長に話を聞いた。

再取り出しについて

――「再取り出し」の概念をどう考えているか。

ウズニアン部長 「再取り出し」はフランスの高レベル廃棄物処分の基本概念だ。次世代に対し、現時点で考えられる最良の解決方法を残し、なおかつオープンにしておくために欠かせない概念と考えている。

――再取り出しの概念の必要性は、どこからきたのか。

ウズニアン部長 これは、政治家が処分事業を遂行するにあたって、再取り出しを確保しないと、とても前に進むことができないと判断した結果だ。再取り出しは、公開討論から生まれてきた要請。国レベルでの決定後、地方の人々に対してはANDRAが、再取り出しを実現するような手段の確保について、具体的に説明することになろう。

――社会合意形成にあたっては、再取り出しが、処分事業においては国レベルでの最上位の概念であり、詳細については、その地方の人々と対話しながら決めていくという二段構えなのか。

ウズニアン部長 そうだ。2015年をめざして、再取り出しの具体的な条件を詰めていく。モニタリングに関しては、国際的枠組(日本の原環センターも参加)で検討を行ってきており、地方の人々に対し、このことは大きな信頼性向上となる。また以前は、科学者、技術者は、科学技術的に間違いないと確信に満ちたやり方で進めていたが、1991年のバタイユ法制定以降は、不確実性にいかに対処するかとの態度に変わって来た。

――再取り出しは、技術的な不確実性というよりも、むしろ社会の要請に応えるためには、時間をかけながら、合意に持っていく必要性があるということから生まれてきたと理解している。仮に地層処分の不確実性に対処するために再取出しが必要となると、地層処分自体が成立しなくなると考えるが、どうか。

ウズニアン部長 その通りだ。バタイユ法制定前後で、安全性の観点から大きな変化があった訳ではなく、地層処分が正しい方法であるという方向性は変わっていない。現時点で、ビュールでの調査を通じて、サイトの特性や人工バリアとの相互関係も十分把握できる。科学技術的調査、研究の進展による成果という事実は、説得力がある。それは、再取り出しを検討するための基礎を十分提供するものである。このような蓄積を通じて、大方の反対派の意見に対する反論は、十分できるとの自信を持っている。またビュールの地層であれば、人工バリアに多くの資金を注ぎ込むことはない、との結論が出せるくらいまでになっている。

科学者への信頼

――科学者が不確実性に耳を傾け、誠実に対処するという態度の変化は、逆に言うと、科学者が自信を無くしたのではないかと公衆に受け取られたことはなかったか。

ウズニアン部長 それはなかったと思う。科学者の“これで間違いない”という態度は、一般の人々にとっては、大衆を侮蔑していると捉えている部分がかなりあった。以前は、科学技術的問題は、“自分達に任せておけ”という態度が強かったが、今は、一般の人々と同じ目線で話し合いに応じ、また分かるような易しい言葉で説明し、安心を与えられるような態度に変化していった。一緒に考えるという態度は、逆に好感を持って迎えられたと思われる。また2005年5月から1年間かけて、各地で13回の公開討論会を開催したが、国全体で3,000人程度しか参加していない。これはある意味で、一般大衆が科学者に対して、信頼感を取り戻した証とも言えよう。公開討論会の場でも、一般の人々が科学技術的問題については、良く理解してくれるようになったと感じており、科学者、技術者に対し、信頼感が深まってきているなと感じている。

(つづく)


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