[原子力産業新聞] 2008年2月21日 第2417号 <4面>

水素吸収放出機構を解明 高エネ機構 ハワイ大、産総研と共同で

高エネルギー加速器研究機構(KEK)はこのほどハワイ大学や産業技術総合研究所と共同で、水素吸蔵物質として関心を集めている水素化アルミニウムナトリウムに添加した金属が、水素の吸収放出を劇的に改善するメカニズムを明らかにした。

研究は物質中に注入されたミュオンが水素と同じ存在状態を示すことを利用したもの。ミュオンは短時間で崩壊し陽電子を放出するが、加速器で発生させたミュオンを物質に照射し、高感度で内部を調べる。

実際の実験は、無添加とチタン2%添加の水素化アルミニウムナトリウムを使用、KEKのミュオン科学実験施設やカナダ、スイスで実施。その結果、両試料とも注入したミュオンが室温以下で水素化アルミニウムと複合体を形成していること、温度上昇とともに別の状態に移動することを確認した。その際、チタン添加試料ではミュオン状態が複合体から異なる格子間位置で拡散運動している孤立状態に移動、これに必要な活性化エネルギーは無添加試料に比べ約3分の1に減少していることが判明した。

研究により水素放出過程で水素結合の複合体が放出速度を低下させるとともに、チタンが放出の触媒として働くことを世界で初めて解明。今後の開発では水素結合が起こりにくい結晶構造とする必要性を示した。


Copyright (C) 2008 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.