[原子力産業新聞] 2008年3月13日 第2420号 <4面>

小型炉で協力会社探し 米ハイペリオン社 燃料はUH3粉末

米国ロスアラモス国立研究所の元研究者らで作る小型原子炉「ハイペリオン」の設計会社ハイペリオン・パワー・ジェネレーション社のジョン・ディール最高経営責任者(=写真)らが来日し、同炉の実現を目指して、日本の製造協力会社を探している。

10日には日本原子力産業協会で同炉が有する技術的特徴などについて説明を行った。

同原子炉の設計の一例では、2万7,000kWの電気出力が可能で、原子炉部分に機械的可動部分がなく、地下に埋設する形でも利用できる。ウラン235濃縮度約5%の三水素化ウラン(UH3)粉末燃料からの発熱は、カリウム(融点63.7度C)型ヒートパイプ(直径2.54cmのもの1,600本)で外部に取り出す。発熱によって分解した水素化ウランは、原子炉容器の外側を取り巻いたパイプから水素を供給することによって、水素は減速材として働くと共に、ウランの再水素化を起こして核反応を継続させる仕組。原子炉の大きさは直径約2mの円筒形で容積は10立方m、重量は5〜7トン、東芝が設計した次世代超小型原子炉システム(4S炉)の容積110立方mに比べてもかなり小さい。

発生する熱は550度Cにも達し、蒸気発生用としても利用できる。5年間燃料交換の必要がなく、燃料交換は原子炉ごとハイペリオン社の工場に持ち込んで行うため、核不拡散上のリスクも少ないとしている。

原子炉製造費が約40億円、燃料費が5年間で約13億円程度と試算している。同社では米国原子力規制委員会(NRC)の認可に18か月を見込み、テスト炉は早ければ来年にも製造開始が可能だ、としている。

同炉の利用は、離島や遠隔地での石油・ガス開発、村落、軍事施設などでのエネルギー利用が考えられるとしている。


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