[原子力産業新聞] 2008年3月20日 第2421号 <3面>

特集7 フランス 放射性廃棄物処分 長期貯蔵=安心感 仏原子力庁 ケシュメール次長に聞くA 現世代が最善を

(前号につづき)

――2006年の法律の中で示された、「100年間の再取り出し性の確保」は、100年程度は人間の管理が可能であるため、少なくとも100年は地下で管理し、次のステップは、次の世代に任せるということだと考えるが、現世代が最大限の努力をしても地下で貯蔵するのが限界だということか。

ケシュメール国際部次長 そう言えると思う。我々の選択が、未来永劫、最良ということはとても言えない。しかし、少なくとも我々の世代のなかでは、最良と思われる選択(地層処分の選択)をしたに過ぎない。そしてその地層処分に、将来にわたって解決策もオープンにするという意味で、“再取り出し性”が付随物として残されている。国民が恐れるのは、科学者、専門家の傲慢性だ。

――日本では、「現世代のなかで、全てを解決していく」という声も強いが。

ケシュメール次長 15年かけて議論、研究開発を実施し、我々が達した最高の結論が、“再取り出し性”を有する地層処分であった。ある意味では、これは、現世代がまさに最善を尽くすという答えではないかと思う。なおかつ、研究開発も続いている。

――スウェーデンのオスカーシャム前市長は、HLW処分で一番大切なことは“時間をかけることだ”と言っていた。やはり、性急に意思決定を迫らないという点が重要なファクターなのか。

ケシュメール次長 その通り。特に、地域の人々や地方議員が良く理解し、消化し、納得することが必要で、反対派にも意見を言わせることも考慮すると時間が必要である。また非常に早い決定は、反対派の過激な反対を招く。一方、決定を全くしないことも、反対派に「ほら、決められないではないか」との言質を与えてしまう。そういう意味では、2006年の法律は、非常に巧みであったと思う。具体的なスケジュールも示し、なおかつ十分な時間を持っての目標設定であるため、議論や理解活動、研究開発もその間、進めることができる。

   ◇     ◇   

――なぜ、2006年の法律のなかで、長期貯蔵の研究開発というオプションを残したのか。

ケシュメール次長 いずれにしても、使用済み燃料は、再処理する前に長期貯蔵して冷却することが必要になる。そのための研究開発を止めるわけにはいかない。1991年の法律で示された3つの方向性を、2006年の法律でも踏襲しており、長期貯蔵についても、研究開発の予算も取るという方向性を示している。

――2006年の貴機関への取材で、長期貯蔵は様々な不確実性に対して、国民の安心を得るうえで非常に重要だという話があったと記憶しているが、どうか。

ケシュメール次長 長期貯蔵や群分離・核種変換の可能性を示しておくことは、国民に安心感を与えると思う。また長期貯蔵は100年、地層処分も少なくとも100年は“再取り出し性”を保持するとなっており、期間的にも似通ったところがある。そのあたりも国民に対し、第3の方法として長期貯蔵の研究開発も継続しておくことは、国民にそれだけ安心感を与えると思う。また長期貯蔵についても当初、地表での貯蔵と浅地層貯蔵という2つの概念が議論のなかにあった。「再取り出し性」についても、浅地層貯蔵であれば、取り出し易いということから、長期貯蔵を浅地層にした方が良いという議論もあり、「再取り出し性」を保持した地層処分と浅地層貯蔵の比較検討も行われた。しかし最終的には、深部の「再取り出し性」を保持した地層処分が採用された。

――再取り出し期間を少なくとも100年とする根拠は何か。

ケシュメール次長 技術的な根拠はなく、むしろ社会的、心理的な要素から100年とされたのではないか。100年というと、感覚的に想像可能な範囲の期間として捉えて決められたのだろう。100年先は、将来世代の範疇に入る入り口だ。     (おわり)


Copyright (C) 2008 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.