[原子力産業新聞] 2008年3月20日 第2421号 <4面> |
原子力機構 トリチウムターゲット 国産に成功 高エネ中性子源に日本原子力研究開発機構はこのほど、核融合研究に必要な加速器型核融合中性子源(FNS)用のトリチウムターゲットの製作に国内で初めて成功した。 FNSは加速した重水素をトリチウムターゲットに当て、核融合炉で生じる単色で高エネルギーの中性子を発生する装置。この中性子を核融合炉の遮へい、低放射化材、トリチウム増殖ブランケットなどの研究開発に利用し、ITER(国際熱核融合実験炉)および幅広いアプローチ活動、JT−60の改造などに反映させる。 同ターゲットは銅製基板にチタンを蒸着し、このチタンに400GBq(1mg)ものトリチウムを吸蔵させる。チタン表面は酸化しやすく、酸化するとトリチウムを吸蔵しなくなり、製作には大量のトリチウムを扱う施設や酸化膜除去技術が必要。これまで、フランスのメーカーが市場を独占しており価格、納期などの点から国産化が求められていた。 原子力機構の核融合研究開発部門核融合中性子工学研究グループとトリチウム工学研究グループは、今回、国内で最大量のトリチウムを扱うことができる東海研究開発センター原子力科学研究所のトリチウムプロセス研究施設を利用し、アルゴン雰囲気中で放電洗浄する表面処理法など独自技術を開発。製作したターゲットは、発生中性子量の時間変化や使用期間などにおいて、輸入品以上の性能を達成した。 高エネルギー中性子を比較的容易に得られる同ターゲットは、放射線計測機器開発、核反応データ測定、校正用標準中性子場などにも使用できる。 |