[原子力産業新聞] 2008年4月10日 第2424号 <3面>

AECLは国内に専念 最新型CANDU炉事業で方針転換

カナダ原子力公社(AECL)は4日、ACR1000の販売および許認可取得に向けた事業戦略を転換。カナダ国内での事業に集中することを発表した。AECLは、新規建設の機運が高まる英国でのACR1000採用を目指し、英当局に事前設計認可を申請していたが、今回の戦略転換に従い申請を取り下げたことも明らかにした。

AECLのH.マクディアミド理事長兼CEOは、「新規原子力発電所建設プロジェクトが浮上しているいくつかの州で、ACR1000の採用が検討されている」と指摘。「カナダ国内でACR1000を建設することが、世界市場で成功する最良の選択」と強調した。

先週号でも指摘したが、ACR1000は世界の原子力発電市場では不利な立場にある。世界的に大勢を占める軽水炉ではなくカナダ式重水炉(CANDU)という独特な炉型であることに加え、近年、世界市場を他社に席巻され、カナダ国外での新規建設プロジェクトに採用実績がないことが原因だ。

新規建設を検討する国や事業者にとって、採用炉型が世界的な標準炉であることは、建設コスト削減の観点だけでなく、設計審査や規制の観点からも大きな意味を持つ。また標準炉の建設および運転に精通することで、製品およびサービスの海外輸出の可能性も開かれる。

世界最大の原子力発電国である米国では、現在多数の新規建設プロジェクトが乱立しているが、米国での採用炉型は、ウェスチングハウス社製AP1000、東芝製ABWR、GE日立製ESBWR、仏アレバ社製EPR、三菱重工製APWRが占めており、最新型CANDU炉であるACR1000の採用は見込めないのが現状だ。加えて英国ではさきごろ、英仏の規制機関の協力強化が発表され、事前設計認可の今後の審査対象からACR1000が除外されることは確実視されていた。

AECLにとって頭が痛いことに、カナダ国内での新規建設プロジェクトでのACR1000の採用も、不透明な状況にある。オンタリオ州やアルバータ州でのプロジェクトは、経済性の観点から、必ずしもCANDU炉にこだわらない姿勢を示している。唯一同炉の採用を宣言しているニューブランズウィック州でのプロジェクトも、ビアビリティ・スタディ(事業可能性調査)では、同炉が建設/運転実績がない点を指摘し、経済性を疑問視する報告が出されている。

こうなるとAECLは、一刻も早く国内でのACR1000建設プロジェクトを実現させ、スケジュール通り、予算通りに建設を実施してみせるしかないだろう。EPRを採用したフィンランドのオルキルオト3号機の建設スケジュールが、ずるずると遅延していることは周知の事実であり、AECLはそこにわずかな勝機を見出せる。そしてACR1000の好調な運転実績を示すことが、世界市場へのなによりのアピールとなる。

カナダ国外でCANDU炉は、アルゼンチン、中国、韓国、パキスタン、ルーマニアの5か国で計10基が運転中だ。アルゼンチンでは、CANDU6(70万kW級)の新規建設へ向けた動きも活発化している。AECLは、「CANDU6については今後も国際展開を継続する」と強調している。


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