[原子力産業新聞] 2008年4月24日 第2426号 <2面>

増えゆく世界のエネ需要 F.グエン IEA上級政策顧問

現在、中国とインドは、世界のエネルギーシステムに変容をもたらしている。IEAがこのほどまとめた“World Energy Outlook 2007”によると、今後、この両国が世界のエネルギー需要増の約半分を押し上げ、特に、石炭に限っては8割以上を占め、それに伴い、CO排出増も全世界の約6割分にも達するとの予測が示されている。GDP年増加率の予測をみると、05〜15年が中国7.7%、インド7.2%だが、15〜30年では中国4.9%、インド5.8%となり、経済成長の大小関係が逆転する。

04年のデータで、発電に伴うCO排出原単位は、中国が世界で最も高く約1,000トン―CO/GWh、次いでインド、豪州の約800トン―CO/GWh、これらの国々はもとより、世界各国が現行のエネルギー政策を大きく変えない限り、温室効果ガスの排出が容赦なく増加することとなる。代替シナリオによる発電ミックスでは、低炭素エネルギー源のシェアを増やすことで、30年時点、世界の発電電力量を12%削減することができる。

代替シナリオでは、一次エネルギー需要を、石炭で基準シナリオの半分以下にまで抑えるが、それでもなお、いずれの化石燃料も需要は増え続け、世界のCO排出量は30年、基準シナリオで現在の約57%増、90年の約2倍の420億トンCOに、代替シナリオでも20年以降は安定するものの、340億トン―COにも達する。そこでこのほど、大気中の温室効果ガス濃度を450ppmに安定させるケースを打ち出した。この「450安定化ケース」では、燃料効率、発電効率、石炭からガスへの転換、原子力、再生可能エネルギー、CO貯留技術などを組み合わせ、CO排出量を230億トン―COにまで抑えることが可能となる。

IEAは、今回の“World Energy Outlook 2007”で、より確実で競争力ある低炭素エネルギーシステムを目指し、エネルギー利用の効率化、クリーンエネルギーの一層の拡大が、世界の持続可能な将来エネルギーに貢献できることを訴えているのだ。


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