[原子力産業新聞] 2008年5月22日 第2429号 <4面>

原子力高稼働が重要 日経賢人会議 低炭素社会実現へ

日経BP社など主催の「成長と環境を考える賢人会議」が19日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪で開かれた。

吉川弘之・産業技術総合研究所理事長(元東京大学総長)が「サステナビリティ――成長と環境」と題して基調講演を行った後、パネル討論「低炭素時代の企業経営と成長戦略を考える」が行われた。

吉川氏は、2050年が1つの環境目標年次になっているが、そのとき石油はなくなっているかも知れないし、核融合が実現しているかも知れない中、7月のサミットを迎える、と指摘。「持続性社会の実現のためには、まず戦争がないこと」が重要であり、気候変動、食料・水・資源・エネルギーの確保、研究協力、教育、生物多様性保護、衛生確保などさまざまなことが相互に関連し、一専門家に任せておけばいいと言うものではない、と述べた。

ただ、2050年の温暖化防止削減目標はたいへん厳しい目標であり、「きちっとしたシナリオを描くことができるかどうか、裏打ちできる技術開発ができるかどうかが問題だ」と強調した。

パネル討論では、茅陽一・地球環境産業技術研究機構研究所長、永里善彦・地球環境戦略研究機関理事長、森本宜久・電事連副会長らが参加し、二酸化炭素の排出権取引、技術開発を中心に討論した。

森本氏は、国別総排出量を決め各企業・工場等の排出枠も決めて取引も認めるキャップ・アンド・トレード方式は、エネルギー使用の制約になり、制限枠を政府が公平に決められるのかと疑問を呈した。森本氏も茅氏もまずは原子力発電所の稼働率向上が何よりも重要だと指摘した。

将来の長期的技術開発で何が重要かと問われた茅氏は、核融合と宇宙太陽光発電(マイクロ波でエネ伝達)を挙げた。


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