[原子力産業新聞] 2008年5月29日 第2430号 <3面>

イタリア 経済開発相が明言 政権期間に原子力復活

イタリアのC.スカヨーラ経済開発相(=写真)は22日、第3次ベルルスコーニ政権期間の5年間に新たな原子力発電所の建設を開始するとの方針を表明した。

これはイタリア産業総連盟の年次集会における講演で明らかにしたもので、同相は公の場での議論を通じて国家エネルギー戦略ともいえる計画を策定することが必要だと強調した。その上で、「我々はもうこれ以上、原子力開発利用復活への行動計画を遅らせるわけには行かない」と言明。「安全かつ競争力のあるコスト、大気を汚さず大規模なスケールでクリーン・エネルギーを得られる方法は原子力だけ」との見解を述べる一方で、放射性廃棄物の処理処分については信頼性のある解決方法を見つけなければならないと指摘した。

同相はまた、原子力という選択はベルルスコーニ首相が新政権において信念を持って進めるべきだとした重要な公約であると強調。「我々は確固たる決意のもとにこの公約を果たして行きたい」と述べるとともに、中道右派の現政権期間内にイタリア国内で次世代原子炉を建設する布石を打つ考えであることを明らかにしている。

同相はこのほか、「イタリアは適切な価格で十分な量のエネルギーを、保証された条件の下で確保しなければならない」と述べた。現在同国がエネルギー輸入のために費やしている600億ユーロは国の貿易赤字の大きな要因になっている点に触れ、天然ガスの輸入・貯蔵システムの更新や再生可能エネルギーの開発なども加速していく方針であることを明らかにした。

同相によると「電源の多様化のためにはエネルギー効率の改善や再生可能エネルギー、クリーン・コールといった新たな技術オプションの開発が重要」で、とりわけ原子力発電は欠かせない選択肢であるとの認識を改めて強調している。

燃料資源に乏しいイタリアでは比較的早い時期から原子力開発に着手しており、1960年〜81年までの間に4基、1,731.6万kWが運転を行っていた。しかし、86年のチェルノブイリ事故を契機に、翌年の国民投票によってこれら4基はすべて90年までに閉鎖。建設中だった新規原子炉の計画も凍結されるに至っている。

S.ベルルスコーニ首相は中道右派の新党「自由の国民」(旧フォルツァ・イタリアおよび国民同盟)を率いて、今年4月の総選挙で3度目の政権に返り咲いたばかり。同政権ではスカヨーラ経済開発相をはじめ財務や環境を管轄する省にも「自由の国民」から入閣しているほか、上下両院ともに中道右派連合が多数派を占めている。


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