[原子力産業新聞] 2008年6月5日 第2431号 <2面>

サミットに向け論説委員と討論 東京工大

東京工業大学原子炉工学研究所は5月に、大手新聞社の論説委員を招き、「洞爺湖サミットに向けてわれわれは何を提言するのか」と題するパネル討論を行った。今夏サミットを見据えて、「原子力コミュニティ」から発信される提言・声明が、どのように寄与できるのかを考察するのがねらい。

日本国際問題研究所の提言「持続可能な未来のための原子力」について、とりまとめに当たった遠藤哲也・元原子力委員長代理が、続いて日本原子力学会声明「地球のためのクールエネルギー原子力」について、河原ワ・同会長がそれぞれ説明し、国際社会に向けて、エネルギー安定供給と地球温暖化対策に貢献する原子力エネルギーの有用性と、一方で、核不拡散を訴える姿勢を示すなどした。また秋元勇巳・日本原子力文化振興財団理事長も、地球を生命体と考えるラブロック博士の「ガイア理論」を引用しながら、「原子力抜きで21世紀を乗り切れるか」と訴えた。

報道機関から、尾関章・朝日新聞論説委員は、今後、途上国が原子力を導入しようとする流れから、「日本の原子力技術は極めて存在理由が高まる」などと述べ、また会川晴之・毎日新聞経済部副部長は、電力中央研究所・東芝が開発する小型高速炉「4S」の核拡散抵抗性に期待を示した。国民理解に関連し、気仙英郎・産経新聞論説委員は、サッカー協会を例に「○○年までにベスト○○入り」といった戦略目標を掲げる必要に言及した。井川陽次郎・読売新聞論説委員は、「社会が原子力をどう考えているかを踏まえて提言すべき」とした上で、今後の若手育成に対する必要性を強調した。

これらを受けて、遠藤氏は、核セキュリティ、貯蔵プルトニウムに関する発信を確実に行うべきとし、秋元理事長は、今後の第二再処理工場計画等を踏まえ、地政学上、アジア全体の原子力を考えていく必要に言及するなど、それぞれ日本の国際社会における使命を強調した。


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