[原子力産業新聞] 2008年7月10日 第2436号 <1面>

原子力「不可欠な手段」 経済と環境の両立強調 洞爺湖サミット 環境合意文書で

第34回目を迎えた主要国首脳会議G8サミットが北海道の洞爺湖で7日から9日まで開催された。今回の主要議題としては、世界経済、環境・気候変動問題、核不拡散を中心とする政治問題などが話し合われ、特に原油価格の高騰を含むエネルギー問題は地球温暖化問題と直結する主要議題の1つとして取り上げられた。エネルギー安全保障問題を大きく取り上げた2年前のロシアでのサンクトペテルブルク・サミットの流れをさらに推し進め、原子力発電が気候変動とエネルギー安全保障上、「不可欠な手段」と初めて盛り込み、その意義を高く評価する画期的なものとなった。9日には議長国の福田康夫首相が議長総括を発表し閉幕した。来年はイタリア開催。

主要国首脳会議はフランスのジスカール・デスタン大統領の提案で、1973年に仏・西独・伊・日・英・米の6か国でスタート。それが今では、加・露・EUが常時加わり、日本での開催は5回目。拡大会合として今回は、アルジェリア、エチオピア、南アなど交えた「アフリカ開発」拡大会合、豪、ブラジル、中、印、韓などを加え、「エネ安全保障と気候変動」問題を討議した主要経済国首脳会合なども行い、サミット過去最多の22か国が参加し、幅広い問題について多角的に議論した。

焦点のG8合意文書の1つ「環境・気候変動」では、気候変動問題と経済成長を両立させる枠組みの中で、「世界全体の温室効果ガスの濃度を安定化させる決意だ」と述べ、それはすべての主要経済国が「共通の決意を通してのみ可能」とした。

原子力については、「原子力計画への関心を示す国が増大していることを目の当たりにしている」と述べ、世界的な潮流に言及、原子力の果たす重要性を指摘している。平和利用のためには、保障措置(核不拡散)、原子力安全、核セキュリティーの3Sが根本原則であることを改めて表明した上で、「日本の提案により3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブが開始される」と述べ、国際原子力機関(IAEA)の場で新たなプロジェクトを計画していることを明らかにしている。

「政治問題」の合意文書では、核不拡散問題が多くを占め、2010年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議の成功を目指すほかに、(1)効果的な輸出管理(2)IAEA保障措置の強化および追加議定書の普遍化(3)放射線源の安全とセキュリティーに関するIAEA行動規範――などの重要性を強調した。

さらに、ウラン濃縮や再処理関連の機材、施設、技術の移転制限を強化するため、「原子力供給国グループ(NSG)」の役割を歓迎した。

最終日の議長総括では、各合意文書を取りまとめた内容を盛り込んだほか、インドとの民生用原子力協力について、核不拡散体制の強化に向けて、「インド、IAEA、NSGおよびその他のパートナーとの取り組みを期待する」と盛り込んだ。

洞爺湖サミットに臨み福田首相は、原産協会が今年4月に開いた年次大会に出席し、「原子力発電は地球温暖化対策の切り札」と初めて踏み込んだ発言を行っていた。


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